小学1年のA君とお母さんが診察室に入ってきました。「ちょっとのどが痛い」とA君、「昨夜から熱っぽく食欲がありません。何となく目が赤いです」とお母さん。確かに、何となく元気がありません。ただ、鼻汁や咳(せき)は軽度です。体温を測ると39.2度ありました。上頸部(けいぶ)の側面を触って押さえてみると、リンパ節に触れてすこし痛がります。のどの奥をのぞくとやや赤く、両側の扁桃(へんとう)に黄白色の膿苔(のうたい)がついていました。アデノウイルスによる「急性咽頭・扁桃炎」を疑いました。

 しかし、念のため、いやがるA君をしっかり抱いてもらい、のどの奥を綿棒でこすって検体をとって迅速検査を行い、アデノ陽性を確認しました(迅速検査ができるようになり本当に便利です。アデノウイルス感染は数日にわたって高熱が続くことがあります。きちんと診断がつくと、何の熱かなと不安な思いをしたり、不要な抗菌薬を飲む必要がないので、迅速検査は意味があると思っています)。A君は眼球の白目の部分(結膜)も炎症を起こして赤くなっていますので、アデノウイルスによる「咽頭結膜熱(プール熱)」と診断しました。

 残念ながら、アデノウイルスには有効な薬がありません。対症療法(症状を軽減する治療)として、のどの炎症をやわらげる薬と熱冷ましを処方し、「栄養と水分をしっかりとってお家で安静にしてください」と説明して帰宅していただきました。A君の場合は唾液や鼻汁・たんと目の分泌液からウイルスを感染させる可能性がありますので、しばらく学校も休んでもらうようにしました。

アデノウイルスには多くの型があり、種々の病気を引き起こします。のどには症状がほとんど無くて、目の白目と黒目(角膜)の両方に強い炎症を起こす「流行性角結膜炎」や、ひどい血尿をおこす「出血性膀胱(ぼうこう)炎」も

 アデノウイルスが原因ですし、ロタやノロに似た「急性胃腸炎」も起こします。最近は流行していないようですが、ある型のウイルスでは「重症肺炎」をおこし死亡したという報告もあります。高熱が続き、なかなか下がらない時にはアデノウイルス感染も考える必要があります。

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