最高裁裁判官の罷免可否を決める国民審査を巡り、海外在住日本人の投票を認めない現行制度を最高裁大法廷が違憲と断じた。15人全員一致の結論だ。チェックを受ける側が総意で、不備を指弾した意味は重い。

 判決は、次回投票できなければ違法と認定した。国民審査は衆院選の際に行われるから、国は遅くとも3年後の衆院任期満了までに、国民審査法を改正し在外投票を実現しなければならない。それにはインターネット投票が有力な答えになるのではないか。

 既に実証実験に入りながら、遅々として進まない議論を加速させるべきだ。セキュリティーや不正防止策などの課題を詰め、早期導入を目指してもらいたい。長年対応せず、この訴訟の一、二審でも違憲とされたのに放置した責任は国にある。

 訴訟は2017年当時に海外に在住し、国民審査に投票できなかった5人が提起したが、国はそれ以前から国政選挙、国民審査を問わず在外投票の拡充に後ろ向きだった。司法に強く背中を押されて、改善する歴史だったと言わざるを得ない。

 国政選挙では00年に公選法が改正され在外投票が可能になったが、比例代表だけだった。最高裁は05年、衆参の選挙区選挙で投票できないことを違憲と判断。国は慌てて対応し、2年後には投票可能になった。今回と同じ流れだ。

 大法廷は「選挙区の在外投票が可能になってから本件国民審査まで、約10年の長きにわたり、国会は何ら立法措置を取らなかった」と非難。立法不作為を認定し、国家賠償も命じた。

 国民審査は、国民固有の権利として憲法が保障する公務員の選定、罷免権を根拠とする制度だ。最高裁の裁判官は任命後初の衆院選時に審査を受け、その後は10年を経過するごとに対象となる。

 国は訴訟で「選挙権とは異なり、議会制民主主義の観点から不可欠の制度とは言えない」とした。暴論と言ってもいい主張だ。大法廷は「憲法は選挙権と同様に国民審査権を保障しており、制限は原則許されない」と一蹴した。当然だろう。

 現行の国民審査は、候補者名を自書して投票する選挙とは異なり、あらかじめ氏名が印刷された裁判官の記載欄に、罷免を可とする場合に「×」を記入する方式。複数を選択することもあり得、有権者の意思表示を容易にする狙いとされる。このため国は「投票用紙の準備などに時間がかかり、在外投票は困難」としたが、大法廷は「現在とは異なる投票用紙や投票方式を採用する余地はある」と否定した。

 その一つとなりうるネット投票は、総務省の有識者研究会が18年に「在外投票での実現に向けた課題、ハードルはクリアできる」と報告、同省が選挙の在外投票を想定し20年から実証実験中だ。

 スマホやパソコンを使い、マイナンバーカードで本人確認した上で、画面に表示される候補者を選ぶイメージで国民審査にも活用できるはずだ。

 国民審査は過去に罷免例はなく、形骸化も指摘されるが「異常事態に備えた制度。あまりにもひどい裁判官を国民が直接チェックする」(元最高裁判事)意味は大きい。

 昨年10月現在の在外邦人は約134万人。有権者は100万人に上るとみられる。これだけの主権者を置き去りにすることは許されない。(共同通信・出口修)