生活保護費の基準額引き下げ取り消し請求訴訟で、処分を取り消した25日の熊本地裁判決要旨は次の通り。【共同】

 【基準額の改定内容】

 2013年の改定は、現行の生活保護基準額を、(1)国民下位10%の所得世帯の消費に合わせる「ゆがみ調整」、(2)08年と11年の物価を比較し、一律4・78%下落したことに合わせる「デフレ調整」―の二つで構成されている。

 【ゆがみ調整】

 厚生労働相は、ゆがみ調整による影響を2分の1とする処理を行っているが、必要性・合理性や効果について、専門的知見に基づき分析、検証することが必要だった。だが、社会保障審議会の生活保護基準部会の委員に処理の検討を明らかにしておらず、適切な分析や検証を怠った。

 【デフレ調整】

 デフレ調整は、総務省が公表している消費者物価指数(CPI)ではなく、厚労省が考案した「生活扶助相当CPI」で把握した物価の下落率に基づいている。デフレ調整をすることは生活保護基準部会で議論されておらず、外部からの視点に全くさらされていない以上、客観性や合理性が担保されているとは言いがたい。

 08~11年の生活扶助相当CPIの下落は、テレビやパソコンなどの「教養娯楽用耐久消費財」の物価下落が相当程度寄与したと考えられる。一方で、生活保護世帯が高価なパソコンなどを購入する機会は多くなく、物価下落の影響を過大に評価してしまう危険があったと言うべきである。

 厚労相は08年を物価下落率算定の起点にしているが、08年は世界的な原油価格や穀物価格の高騰により、11年ぶりにCPIが1%を超え1・4%上昇した後、下落を続けている。08年を起点とすると、07~08年の特異な物価上昇を考慮せず、08年以降の物価下落のみを評価することになるのは明らかで、合理性を認めるのは困難である。

 【二つの調整の影響】

 ゆがみ調整による減額が3年間で90億円、デフレ調整の減額が580億円になる。併せて行うことによる減額幅は大きく、厚労相は影響を統一的に分析、検証すべきだったが、専門家に諮った形跡は皆無で、適切な分析、検証を怠った。

 【結論】

 厚労相の改定に至る判断の過程、手続きには統計などの客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いている点で過誤、欠落があると認められ、裁量権を逸脱または乱用したものと言わざるを得ない。

 したがって、改定は生活保護法3条および8条2項の規定に違反する違法なものである。