「御屋形日記」元禄5(1692)年6月3日条(多久市郷土資料館蔵)

 多久市郷土資料館で開催中の企画展「多久古文書学校の活動展2022~元禄の多久に遊ぶ~」(6月12日まで)で紹介している八つのエピソードのうち、ウグイスに翻弄(ほんろう)される武士たちの苦労を紹介します。

 「御屋形日記」(佐賀県重要文化財多久家資料の内、時期によって「役所日記」「日記」と表記されている)元禄5(1692)年6月3日条に、次の記事があります。

 多久領四代領主多久茂文は、妻の叔父である久保田領主村田政辰に頼まれ、ウグイスの巣とヒナを贈りました。中世から近世にかけて、ウグイスの鳴き声を楽しみ、その声を競わせる「鳴き合わせ」が行われ、愛好する人が多かったのです。ところが、多久から贈ったヒナがウグイスではなく他の鳥で、いい加減なことだと噂(うわさ)されているというのです。多久の恥になってはいけないと、茂文は再びウグイスを見つけるよう命じます。何とか捕獲して村田政辰へ贈りましたが、またしても別の鳥で、今度は関係者が処罰されることになりました。

 ウグイスは大変警戒心が強く、なかなか姿を見ることができません。巣を見つけたとしても、ホトトギスが托卵(卵を別の鳥の巣に生み、育てさせる)していることがあるため、ウグイスと思ったらホトトギスだったのでしょうか。領主の親戚付き合いのため、東奔西走したあげく処罰されてしまった武士たちに、同情せずにはいらせません。

 現在、許可なく野鳥を捕獲、飼育することは法律で禁止されています。

(志佐喜栄 多久市郷土資料館)