持ち込まれたハウスミカンの出来具合を確認する農家=唐津市浜玉町のJAからつ柑橘選果場

 原油や原材料価格などの高騰が経済、暮らしを直撃している。直近も企業物価指数、消費者物価指数の近年にない「上昇」が発表されたばかり。影響は多岐にわたるが、佐賀県の基幹産業の一つである農業はどう対応しているのか。長期化が懸念される中、生産現場や行政など関係機関のスクラムが欠かせない。

 施設を加温し、冬と夏の季節を逆転させて栽培するハウスミカン。佐賀県の生産量は日本一で、2位愛知県の約2・5倍を誇る。主産地のJAからつ管内では4月下旬に出荷が始まったが、農家は「これまでで最も厳しい一年になるかもしれない」。先行きへの不安は増すばかりだ。

 管内の唐津市と玄海町では170戸が約80ヘクタールで栽培。出荷の最盛期は7月中旬で、9月下旬まで続く。今季は例年並みの出荷量4400トン、販売高34億5千万円を目指す。ただコスト増が経営を圧迫し、加温するためのA重油の使用額は、4月末現在で前年の1・5倍に膨らんでいる。

 JA担当者は「資材も高騰している。国、県の事業を活用しながらコストを抑えたい」。これまでも重油暖房からヒートポンプ(農業用エアコン)への切り替えを進め、導入率は面積の6割。ほかにもハウスのビニールの多層被覆などで危機を乗り越えてきた。

 行政の動きでは、同様に原油価格が高止まりしていた2008年、12年に佐賀県は「脱石油・省石油型農業」実践策をまとめた。19年度からはイチゴ、花きなどを含めた産出額を888億円に伸ばす「さが園芸888運動」に取り組み、農家のハード整備に対して市町とともに補助している。

 国は施設園芸の燃油価格が基準を超えた時に補填(ほてん)する対策でこの春、「さらなる高騰に備える」として基金積み立ての上限を引き上げるコースを新設。さらに4月末に発表した総額約6兆2千億円の総合緊急対策の中で、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の使途に、新たに原油や物価高対策も加えた。

 農業にとどまらず施策への展開が待たれるが、佐賀県は全庁的な対策本部会議を昨年12月から今月まで4回開いている。県内外の動向を共有し、各部局が対応状況などを報告。事務局の県担当者は「国の対策では届かない部分を県が補い、各部局が対策をとっていく。それには現場の声をきちんと拾うこと」と話す。

 原油価格の高騰は脱炭素の流れやコロナ禍からの景気回復、ロシアのウクライナ侵攻などが絡み、長引く可能性がある。さらに円安も加わり、農業全般では肥料や飼料高なども打撃を与えている。これまで積み重ねてきた施策はもちろん、先行き不透明な現状は緊急、機動的な対応も求められる。

 「日本一」のハウスミカン。それでも20数年前のピーク時から栽培面積は3分の1に減少した。ただ近年、10アール当たり販売高は年々上がっており、JA担当者は「省エネはもちろん、消費者に喜ばれる品質、収量を伸ばす技術が大切」。産地のたゆまぬ努力を下支えしたい。(松田毅)