つらい出来事があっても日にちがたてば、少しずつ痛みが和らぐ。元に戻るわけではなく、忘れられるわけでもないが、時間が癒やしてくれる。そんな「日にち薬」について以前、この欄で触れた◆遺族や家族はどんな思いで一日、一日を過ごしてきただろうか。北海道・知床半島沖の観光船沈没事故は、きょう23日で発生から1カ月になる。乗船していた26人のうち14人の死亡が確認され、北方領土の国後島でも遺体が見つかった。ほかは今も行方不明のままである◆大切な人との別れから日も浅く、遺族の痛みは「日にち薬」で和らぎはしないだろう。行方不明者を待ち続ける家族は生存に一筋の望みをつなぎつつ、早く見つかってほしいと祈る毎日だろう。海底に沈んだ船体の画像をどんな気持ちで見たかと想像すると、胸がふさがる◆この間、運航会社の不十分な管理体制が明らかになってきた。知識や経験の不足、運航するかどうかの判断基準の曖昧さ、通信手段の不備…。伝わってくる情報からは命を預かる業務なのに、責任の重さに対する認識が甘かったと言わざるを得ない◆実態解明とともに捜索は続いているが、深い海での作業を可能にする「飽和潜水」でも新たな手がかりは見つからなかった。必ず、どこかに。癒えるには短すぎる1カ月、待つには長すぎる1カ月である。(知)

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