ムラサキシジミの成虫

ムラサキシジミの幼虫と随伴するハリブトシリアゲアリ

 ムラサキシジミというシジミチョウの仲間の幼虫は、体から蜜を分泌してアリに提供し、その見返りとして寄生蜂などの天敵から身を守ってもらう。

 各地でムラサキシジミの幼虫とアリ、寄生蜂の関係を調査したところ、幼虫を訪れるアリは多様であり、過去の記録と私たちの調査結果を含めると合計16種にも及んだ。つまり、ムラサキシジミの幼虫は、それぞれの地域や環境に生息するアリたちと、臨機応変に共生関係を結んでいるらしい。

 一方、ムラサキシジミの幼虫に寄生する天敵は、どこの地域でもコマユバチ科の1種のみが主要な寄生蜂であった。

 室内実験の結果、アリによる防御は「鉄壁」であり、アリが周りにいると幼虫はコマユバチからの攻撃をほぼ完全に逃れられた。したがって、コマユバチは、アリがいないわずかな隙をついて幼虫に寄生しているのかもしれない。

 ムラサキシジミとアリは天敵からの防衛と蜜の獲得という、双方に利益がある関係と考えられてきたが、近年の研究から、幼虫が提供する蜜には、アリをその場に留め、かつ、攻撃性を高めるいわば「薬物」のような成分が含まれていることが判明した。ムラサキシジミの幼虫の周りにいるアリは、実際には「薬物依存」のような状態にされており、幼虫から離れられなくなっている可能性がある。

 人間にも表と裏の顔があるように、一見、可憐(かれん)なシジミチョウも、裏では他者を利用して、したたかに生き残っているようだ。

(佐賀大農学部准教授)

=毎週日曜掲載