記録的な大雨被害から再起した鵜池幸治さん。大型ハウス約45アールでキュウリを養液栽培している=大町町下大町

記録的な大雨被害から再起した鵜池幸治さん。大型ハウス約45アールでキュウリを養液栽培している=大町町下大町

 2019年8月の記録的な大雨で浸水被害を受けた杵島郡大町町のキュウリ農家、鵜池幸治さん(37)が、町内で昨年12月に稼働した園芸団地で再起を図っている。スマート農業で大規模栽培をしている全農の施設で最新技術を学び、キュウリの養液栽培に取り組んでいる。

 鵜池さんは同町中島の約10アールで生産していたが、大雨で佐賀鉄工所大町工場から流出した油がハウス内に入り込む被害を受けた。土壌を入れ替えるためにハウスを解体しなければならず、約2千万円かかることが分かり「一時は農業を辞めようと思った」。大町町の園芸団地構想を知り「今までより水害に遭いにくい立地だった。20年近くキュウリを作ってきて、これしか知らないから」と気持ちを奮い立たせた。

 園芸団地ができるまでの生活費を稼ぐとともに新たな技術を学ぼうと、キュウリの多収栽培に取り組む国内最大級の実証施設「ゆめファーム全農SAGA」(佐賀市高木瀬町)に19年12月から21年8月まで勤務。これまでの土耕栽培ではなく、全国的にも珍しい養液栽培について理解を深めた。「肥料づくり、与える水のコントロールなど分からないことだらけだった。だが収量が増やせるのではないかと希望を抱いた」

 国や県、町の手厚い補助を受け、園芸団地に水や二酸化炭素、室温などをデータ管理できるハウス約45アールを建設した。高さはこれまでの倍以上の4・8メートルあり、高所作業車を使用する。昨年12月に7500本を定植し、妻と両親、パートらと管理や収穫作業を行っている。「慣行栽培は職人技術が必要なので全て自分でやっていたが、今は単純作業がメインとなった」と省力化のメリットを語る。

 一方で「養液栽培のほとんどはトマトで、キュウリはまだノウハウが蓄積されていない。ゆめファームと水質が違うなど、学んだことをそのまま生かせるわけではなく、植物を観察し対策を打つ点は変わらない」と指摘する。

 園芸団地では、キャリア34年で農業士として認定されている同町の梶原雅之さん(54)もキュウリを約23アールで土耕栽培している。規模拡大を目的に昨年12月に入植し「土地所有者はもちろん、地元の理解があって団地ができたことに感謝している」と話す。

 大町町によると、3区画目となる約26アールのハウスが年明けに完成する予定という。新規就農者がキュウリを土耕栽培する予定で、梶原さんのほ場で研修中だ。鵜池さんは「同じ場所にハウスがあり、栽培の相談をしやすいのも団地の良さ。いろんな巡り合わせでチャンスをもらったので、しっかり結果を残したい」と意欲的に語る。(大田浩司)