15日に武雄市の治水とまちづくりをテーマに開かれたシンポジウム=武雄市北方町の北方公民館

 2019、21年と2度の浸水被害に遭った武雄市に再び心配な季節が巡って来る。昨年からさまざまな対策が発表されたが、整備はどこまで進んだのか。市民の関心が高まる中、市内で15日に治水シンポジウムが開かれ、集まった市民に対し、市や佐賀県、国が治水対策の取り組みを説明した。内容は理解できたが、いつまでに完了するのかは判然としない。実効性を高めて早く市民に安心感を与えてほしい。

 水害のメカニズムが内水氾濫であることが分かって以来、行政からは六角川の水位を下げる取り組みが次々と打ち出された。武雄市は水を上流で溜(た)め込む、田んぼダムの推進に力を入れる。激しい雨が降った時、田んぼに溜まった水を一気に排水路に流さず調整板を利用してゆっくりと流す。急激な水位の上昇を抑える方法だ。現在、市内の朝日、東川登、西川登町の営農組織の協力を得て、160ヘクタールの田んぼを確保している。

 さらに市内400を超えるため池を調査し、大雨の時に水を溜め込む治水用として活用できないかを探っている。市治水対策課によると、市内には10万トンクラスのため池が15カ所あるという。本来は農業目的だが、大雨前の事前放流が可能か、貯水能力をさらに向上させることができるか活用法を検討している。昨年秋に発表した「新・創造的復興プラン」では8月に調査結果が出るとのことだったが、6月中にもまとまる見通しで、注目したい。

 国土交通省武雄河川事務所では、六角川流域の杵島郡大町町から武雄市橘町までの間の河道掘削を緊急的に実施している。合わせてヨシの繁茂を抑える措置も取っており、計画通りに事業が進めば河川の水位を下げることができ、昨年のような排水ポンプの停止には至らないとしている。加えて高橋排水機場にある3台のポンプを、24年までに段階的に増強する計画も進めている。

 ただ、これらの計画は効果が不透明で、地域住民からすれば「本当に大丈夫か」という疑問はぬぐい去れない。シンポジウム会場でも「計画が完了する前に雨のシーズンが来るのでは」と不安の声も聞かれた。さらに「市内商業施設などの開発が、降雨時に下流域に及ぼす影響を検証したのか」や「ポンプを増強しても、土地の低い地域では川の水が逆流してくる」との意見も出た。

 30年に一度といわれた水害が、3年間で2度も発生した。市民に与えた影響は計り知れない。計画は必要だがシンポジウムなどを通して、市民と向き合う機会をつくることも大切だ。秋には新幹線が開業し地域の発展が期待できる一方で、今も不安を抱えながら雨の季節を迎える市民がいることを忘れてはならない。(澤登滋)