サガン鳥栖のサポーター。声出し応援が禁じられていて、手拍子やはりせんをたたいて応援した=5月3日、鳥栖市の駅前不動産スタジアム

 サッカーのJリーグは17日、新型コロナウイルス感染拡大対策のため禁止している声出し応援の段階的導入を決めたと発表した。発声を伴う応援の再開は多数の観客が集まる国内のプロスポーツイベントで初。6~7月に数試合で運営検証し、その後は希望する全クラブで実施できるように進める。

 検証は、まず6月4日か11日に茨城県鹿嶋市のカシマスタジアムで鹿島が戦うYBCルヴァン・カップのプレーオフ(対戦相手未定)と同12日に東京都調布市の味の素スタジアムで実施のJ2東京V―岩手で行う。

 Jリーグの野々村芳和チェアマンはオンラインでの取材に「熱量を早く取り戻さないといけない。サポーターが力を発揮できる場を提供できないのは本来のサッカーではない」と話した。

 前後左右を空けて席を配置した「声出し応援可能エリア」では不織布マスクを着けた上で声援を送れる。計3千人までが対象で7月は7千人での検証を6試合程度で予定。産業技術総合研究所が観客同士の距離や二酸化炭素の濃度などを測定し、リスクを調べる。感染防止のため当該試合は5千人または収容人数の50%のうち、大きい方を全入場者の上限とする。

 日本では拍手や鳴り物での応援が定着してきたが、サッカーが盛んな欧州では観客の歌声や声援が戻っており、規制緩和を求める声が強まっていた。4~5月に東南アジアで行われたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の1次リーグでは声援が認められ、Jリーグは調査のためスタッフを派遣していた。

 サッカー・J1サガン鳥栖は、声出し応援について「現時点で決まっていることはなく、今後検討していく」としている。ゴール裏のサポーター団体「ノルド」代表の板山高大さん(38)は「賛否両論あると思うが、(リーグとしての声出し解禁に)一歩進んでよかった」と歓迎する。クラブの対応は未定だが、現在5位につけるチームの浮上に向け「声援は選手の後押しになるはず」とスタジアムに声援が戻る日を待ち望んだ。

観戦の醍醐味、集客響く

 新型コロナウイルス禍においてJリーグはプロ野球と連携し、足並みをそろえながら政府と緩和協議を進めてきた。声を出しての応援で先行することになった背景には観客の戻りの鈍さがある。声出し声援にはまだ積極的ではないプロ野球より先に、大きな変化に打って出た。
 「サポーター」と呼ばれるサッカーファンは、チームと一緒に戦いたいとの意識が強い。プレーを見るだけでなく、声援や歌声で選手の背中を押すことに楽しみを感じている。Jリーグの野々村芳和チェアマンは「サポーターがつくる雰囲気も含めて一つの作品」と語るが、会場内の熱狂的なムードを味わうこと自体が観戦の醍醐味(だいごみ)だった。
 欧州各リーグでは、日本で失われて久しい歌声と活気が戻っている。日本のファンも映像で目にし、Jリーグのクラブに「声を出せないなら会場に来る意味がない」との声も寄せられるようになっていた。
 その一方、拍手で応援するスタイルに慣れたサポーターもいて、感染を恐れ「大声を出す人がいるから席を替えてほしい」との苦情もある。科学的根拠を積み重ね、日常を取り戻すステップは社会生活全般と変わらない。チェアマンには「少しずつ前に進んでいく空気感に変えられる役割を、サッカーが担えたら」との思いもある。