たんの吸引や人工呼吸器の管理などが日常的に必要な「医療的ケア児」への支援が本格化している。2021年9月には医療的ケア児やその家族への支援を国や自治体の「責務」と明文化した支援法が施行され、佐賀県は22年4月に支援センターを開設した。具体的な施策の実践はもちろんのこと、当事者たちの声を聞きながら社会全体で支える機運の醸成が肝要だ。

 医療的ケア児とは、胃にチューブで栄養を送る経管栄養や気管切開に伴うたんの吸引などの医療行為が日常的に必要な子どもたちのこと。寝たきりの子もいれば心身障害があるケースもあり、症状は一人一人違う。

 医療的ケア児の数は厚生労働省の推計で20年度、全国に約2万人とされる。新生児集中治療室(NICU)の整備といった医療技術の進歩で、昔は助けられなかった命が救えるようになり、過去10年で約2倍になった。佐賀県内では約160人が在宅などで生活を送っているという。

 多くの場合は医師や看護師の指導を受けた家族がケアに当たっている。24時間、昼夜関係なく定期的にたんを吸引をするなど負担が大きい上、世話のために家族が離職せざるを得ないことなどが課題になっている。

 こうした実情を受け21年6月、医療的ケア児や家族に対する支援法が成立、9月に施行された。適切な対応を取ることを国や自治体の「責務」と明記し、保育所や学校への看護師らの配置や、全国に支援拠点を整備することが柱になっている。

 これを契機に全国的に取り組みが進んでいる。佐賀県は4月、当事者たちの負担軽減を目的に支援センターを開設した。退院後の戸別訪問など「アウトリーチ(訪問)型」の支援を充実させるほか退院、就園、就学といった節目の困りごとに相談員が寄り添う。無料通信アプリ「LINE(ライン)」でも相談を受け付けているのが特徴だ。

 県はこれまでも独自に当事者たちの支援に取り組んできた。介護者のレスパイト(一時休息)支援、医療的ケア児コーディネーターの養成、災害時に使用する非常用電源の購入補助、保護者らからの相談を受け付けるホットラインの整備などだ。山口祥義知事は昨年9月の県議会一般質問でこれらの施策を説明しながら「法律がなくても、みんなの思いで一つ一つ丹念に施策を実現してきた」と強調した上で、国の超党派による議員立法を評価した。

 制度的な枠組みが整ってきたことは歓迎したい。保護者からは「何をどこに相談していいのか分からない」という不安の声も多く、専門知識のある職員がワンストップで対応するセンターができたことは、一定の安心につながるだろう。

 ただ、慢性的な人手不足もあり、希望通りに保育所や学校に看護師を配置することは難しく、具体的な体制づくりはこれからだ。どのようなニーズがあるのか、当事者たちの声に丁寧に耳を傾けながら施策を練る必要もある。

 支援法では基本理念で「日常生活・社会生活を社会全体で支える」とうたう。誰もが共生できる地域づくりを一人一人が心がけていきたい。(林大介)