「ダブルミーニング(二つの意味)だからね」。音楽家の宇崎竜童さんは、妻の阿木燿子さんから歌詞を渡された時にそう言われたという。夫妻で制作した「沖縄ベイ・ブルース」である◆沖縄の本土復帰から50年。多くの関連記事が載り、その一つに宇崎さんのインタビューがあった。歌詞はそのまま読むと、沖縄に住んでいる女性が恋をした男性と一緒に旅立つつもりが、裏切られてしまう失恋の物語。阿木さんは女性を沖縄、男性を政府として二つの意味を込めた◆〈約束はとうに過ぎて影ばかり震えてるの〉〈待ち惚(ぼう)け残して青い鳥が逃げた〉〈約束はオウム返し〉-。国土面積の0・6%の沖縄県には、在日米軍専用施設の約70%が集中する。復帰によって沖縄県民は「本土並み」の基地縮小を期待したが、今も状況は変わらない◆約束はとうに過ぎて待ち惚けで、幸せを運んでくるはずだった「青い鳥」は逃げたと感じている人たちがいる。きのうの復帰50周年記念式典で、岸田文雄首相は基地問題に触れ、負担軽減の目に見える成果を着実に積み上げる決意を示した。忘れてはならない約束である◆「沖縄ベイ・ブルース」に込められた裏側の意味が消え、失恋の歌として聞かれる日はいつになるのか。重い負担を背負わせてきた沖縄の歴史と現状、これからに目を向け続けたい。(知)

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