昭和初期の肥前町の営みを描いた水彩画=唐津市本町の旧唐津銀行

作品「見送り・佐久目の渡し」

昭和初期の肥前町の営みを描いた水彩画=唐津市本町の旧唐津銀行

 昭和時代からの唐津市肥前町の暮らしを描き続けた井上明義さん(2006年死去、享年83)の水彩画展が、唐津市本町の旧唐津銀行で開かれている。戦前から戦後までの世の移り変わりが綿密に描かれた原画109点が並ぶ。22日まで。

 井上さんは東松浦郡入野村(現・肥前町)で生まれた。大工をなりわいとしていたが、感受性豊かで絵心にあふれ、60代に入った83年ごろから故郷での記憶を水彩画として残し始めたという。井上さんの作品が役場の職員の目に留まり、生前に肥前町役場に寄贈された。

 原画を一堂に展示するのは初めて。当時の農業や村の祭事の様子などを繊細なタッチで表現する。「見送り・佐久目の渡し」は唐津方面に向かう唯一の航路・仮屋から船に乗った兵士を国旗を持った子どもたちが見送る様子が描かれ、戦時下の高揚と悲哀を感じさせる。

 13日に開かれた内覧会に参加した市内の鶴松造園建設の鶴田忠嗣社長は、自身の父と井上さんに親交があったといい、「小さい頃に見た記憶がかすかにあり、懐かしさを感じた。本にまとめて残してほしい」と話した。

 多くの作品に当時の「肥前言葉」と現代語訳が記され、作品に解説が添えられている。主催した実行委員会の岩本未央子委員長(肥前公民館長)は「まさに肥前町の文化遺産といえる。当時のふるさとの様子を後世に残したいという思いがひしひしと伝わってくる」と語る。

 観覧無料、午前9時~午後6時(入館は午後5時40分まで)。問い合わせは実行委員会、電話090(4352)3712。(松岡蒼大)