認知症などで判断能力が十分ではない人に代わり、裁判所から後見人に選任された弁護士や親族らが預貯金の管理などを行う成年後見制度について、政府は2022年度から5年間の基本計画をスタートさせた。厚生労働省の推計によると、認知症の人は約600万人に上るが、制度の利用者は昨年末の時点で約24万人にとどまっている。

 00年に導入され、超高齢社会に欠かせない制度と言われながら、利用が伸び悩む背景には使い勝手の悪さがある。後見人の大半は弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門職。報酬は後見を必要とする本人の財産から支払われるが、いったん後見人を決めたら、生涯代わらない例が多い。

 本人や家族が後見人の仕事ぶりに不満でも、財産の着服が発覚するようなことでもない限り交代は難しく、報酬を払い続けることになる。基本計画には、本人のニーズに応じて後見人の交代を柔軟に認め、必要な範囲と期間だけ利用できるよう見直す方針が盛り込まれた。また裁判所が個別に判断する報酬の算定基準も分かりやすくする。

 ただ課題はほかにもある。全国の市町村で利用者らの相談に応じ、裁判所や後見人との連携を担う「中核機関」の設置は思うように進まず、地域に根ざした市民後見人の育成も遅れている。制度定着に向けて利用者の視点に立ち、不断の見直しを怠ってはならない。

 成年後見制度の利用は、判断能力が不十分な本人や親族らが家庭裁判所に申し立てる。家裁に選ばれた後見人は本人に代わり、財産管理や福祉サービスの手続きなどを行う。全体の8割が親族以外。そのほとんどを弁護士ら専門職が占める。制度導入の当初は親族の後見人も多かったが、着服などが相次いだこともあり、専門職が増えた。

 後見人に支払う報酬は家裁が決める。もともとは管理する財産の額に応じて決めていたが、最高裁は19年、業務の難易度によって調整するなど算定方法を改定するよう全国の家裁に通知した。今回の基本計画では、算定の考え方を整理するよう最高裁に求めている。

 その計画の中で、とりわけ重要なのが、後見人の交代推進だ。専門知識を要する財産管理や契約などは弁護士ら専門職が担い、病院の入退院手続きなど暮らしに寄り添った支援は親族や市民後見人が受け持つといった形を想定している。役割分担を基に、例えば資産の整理が終わったら、専門職から親族か市民後見人に業務を引き継ぐという運用もできるだろう。

 このうち市民後見人は、地域住民で利用者の生活状況に詳しい人が自治体などの研修を受け、家裁から選任される。資格は必要ない。利用者と頻繁に会えることから、日常生活の支援に向いているとされる。しかし現在は後見人全体の1%に過ぎない。制度を柔軟に運用するため、担い手の確保を急ぐ必要がある。

 また利用者らの相談に乗り、後見を巡る調整を担う中核機関について政府は当初、21年度末までに全市区町村に置く目標を掲げたが、20年10月時点で設置自治体は39%にとどまり、目標達成を24年度末に先送りした。

 制度を支える基盤の整備は待ったなしだ。さらに利用者本人の意向を尊重しながら暮らしを後押しするという制度の趣旨を踏まえ何ができるか、一層知恵を絞りたい。(共同通信・堤秀司)