わが社を訪ねてきたその女性に応対したのは2018年春のこと。「あしなが育英会」の募金活動の取材依頼だった。熱心に説明する姿に好感が持てた。昨年4月、彼女からうれしい連絡をもらった。目標だった看護師の国家試験に合格し、名古屋で働き始めたという◆彼女は小学1年の時に母を病気で亡くし、あしなが育英会の奨学金を得て高校から専門学校に進んだ。大切な人を失いたくない。命を助けられる仕事って何だろう。そう考えた時、母の仕事だった看護師になろうと決意した。彼女の祖母も看護師。曽祖母が自宅で倒れた時、心臓マッサージを施す祖母の姿に「すごく格好いい」と触発された◆奨学金をもらっているとはいえ、専門学校を卒業するまで経済的に楽ではなかったはず。でも、悲しみやつらさを知る人は、その分、人に優しくできる。吉報から1年、きっとすてきな看護師に成長しただろう◆看護とは手と目で見て、言葉を添えて守ること、と何かの本にあった。「看護」の字を見ると、なるほどと思う。きのう12日はナイチンゲールの誕生日にちなんで「看護の日」だった◆ナイチンゲールが活躍したクリミア半島は、争いが繰り返された悲しい歴史がある。戦下のウクライナでも今、ナイチンゲールのように命と向き合う看護師がいると思う。感謝を新たにしたい。(義)

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