人口3千人に満たない北海道の港町が突然、全国の注目を集めた。2020年10月、九州電力玄海原発などから出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた調査を全国で初めて受け入れた寿都(すっつ)町。6期目の片岡春雄町長(73)は議論に「一石を投じた」と強調する。調査が進む町を訪ねた。
雪に埋まるように民家がぽつんぽつんと建っていた。3月下旬、新千歳空港から西方に約180キロ。寿都町は日本海をU字に臨む。歩いても、町民とすれ違うことはほとんどない。海を向いて鎮座する明治期の「鰊御殿(にしんごてん)」が、過去の栄華を静かに物語っていた。
同じく日本海に臨む東松浦郡玄海町に立地する玄海原発が、北海道のこの小さな港町と「核燃サイクル」というシステムでつながるかもしれない。全国の原発の使用済み核燃料は、青森県六ケ所村の工場に集められて再処理され、「核のごみ」が出る。そして地下300メートルより深くにできる最終処分場に持ち込むことになる。処分費用は約4兆円。桁違いの巨大事業が、のどかな景観からは想像できない。
町はなぜ「核のごみ」の最終処分場選定の調査に応募したのか。片岡町長は18年9月に北海道全域で発生した「ブラックアウト(大規模停電)」を遠因に挙げた。この経験を境に、エネルギー政策への関心に「スイッチが入った」。