きのうは少し遠回りし、桜並木が美しい多布施川の堤防道路を選んで通勤した。道幅が狭いため普段は通らないが、この時季はゆっくりと車を走らせる◆打ち上げ花火のような満開の美しさは当然すてきだが、花びらが舞い散る様子も風情がある。花びらが地面に舞い降りれば花筵(はなむしろ)、川面に舞い散れば花筏(はないかだ)。先人たちの表現に感心する。「花よりだんご」が大好きで左党の筆者は「花びらが杯に落ちてくれないかな」と思ってしまう◆堤防に桜が多いのは、根が深く、広範囲に広がる特性と、大勢の人に桜を見に来てもらい、地面を踏み固めてほしいからという。来年こそはリアルな「桜マラソン」が開かれ、1万人のランナーがこの道路を走ってほしいと願う◆桜が満開となった1年前の3月末、入院中の父に桜の花びらくらい持っていこうと考えていたら、病棟の看護師さんたちがベッドごと屋外に連れ出してくれて、父は人生最後の花見を楽しむことができた。優しい看護師さんたちにあらためてありがとう◆今年の花見の季節もそろそろ終わりそうだ。例年より桜を楽しめる期間は長かった気もするが、同じ景色を毎年楽しめるわけではない。「心に焼き付けておきたい景色」に出合えるのは幸せなこと。その幸せをつかむには、心も時間も余裕が必要だろう。遠回りは悪いことではない。(義)

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