塩化ビニールの筒を調べる竹下直彦教授。左は卵が産み付けられている筒、左はオスのヤマノカミ(写真は合成)

 大潮の最終日の午前3時ごろ、鹿島川の江湖(ごうこ)をヤマノカミ(スズキ目カジカ科に属する魚の一種)の調査に向かう水産大学校(山口県下関市)の竹下直彦教授を乗せた漁船が、闇の中をゆっくりとサーチライトを照らしながら進む。

 ヤマノカミの調査を始めたのは三十数年前だが、25年前に鹿島魚市場で中原豊さん(82)と出会ってからは、調査の場所を鹿島川と塩田川の江湖沿いの牡蠣(かき)礁にした。ところが中原さんが今年に入って急に入院することになり、鹿島市新籠(しんごもり)の稲富一三さん(74)が引き継ぐことになった。

 ヤマノカミは56年前までは、サイズが大きく数も今よりはるかに多かったが、年々減ってきて産卵する数も少ないそうだ。今回は4カ所に産卵のための塩化ビニールの筒を全部で60本置いている。最後に調べた塩田川江湖沿いの牡蠣礁にある10本の中の1本に、卵が産み付けられていた。

 中にはオスが入っていたが、体長は126ミリだった。以前は200ミリ前後が多かったそうだ。有明海も流入する河川も、ますます生物がすみにくい状態になっているようだ。