著名人の方ががんに罹患(りかん)すると、そのがんを心配して受診される方が増えるのはいつものことですが、今回おなじみの時代劇俳優さんが前立腺がんでなくなられた影響は、いつもにも増してあったように感じます。私の小さいころは時代劇に、その後は現代劇にも多く出演され、楽しんで拝見していました。先進医療を求めて外国へ行かれたりと、まだまだお元気に過ごされるのではと思っていましたので、残念でなりません。

 近年では前立腺がんはかなり早期に発見されることが増えました。5年生存率なども他のがん腫に比べて比較的良好な成績が出ていることから、立ち向かえるがん、といった印象をもっていただいているのではないかと思います。

 しかし、さまざまな治療を行ってもがんが繰り返しできる場合もありますし、コントロールがうまくできなくなることもあります。経過が長いからこそ、このようなことが起きるとも言えるでしょう。実際、早期の前立腺がんに対して手術や放射線で治療を行い、10年以上経過してからまた前立腺がんの治療を追加する、というのはそう珍しくないケースなのです。

 コロナ禍になりがん患者が約6%減っています。これはがんそのものが減少したわけではなく、コロナ禍で定期検診などを受ける方が減り、本来見つけるべきがんが放置されてしまったためではないかと言われています。がんは進行すればそれなりに症状が出ることが多いですから、おそらくここで見逃されているがんは早期がんが多いのではないかと推測されます。前立腺がんは一般的には進行が緩やかですが、中には急速に進行する場合もあります。

 もっとも大切なのは、今ある状況をきちんと評価して、油断せず、しかし恐れすぎずに「よかあんばい」で向き合っていくことではないかと私は思っています。

 (なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)