情報があふれる中で目に留めてもらうのは容易ではなく、発信する側は興味を持ってもらおうと知恵を絞る。斬新でインパクトのある表現も多いが、ときに配慮を欠いて批判を受けるケースがある◆乳がん検診の受診を呼び掛ける「ピンクリボンデザイン大賞」ポスター部門のグランプリ作品が物議を醸した。〈「まさか、私が」と 毎年9万人が言う〉。検診の大切さに気づかされるコピーだが、図柄が問題となった。ガラガラと回す福引の抽選器から、ピンクの玉が一つ出ている◆福引はなかなか当たらないが、誰かが当選を引く。自分は乳がんにならないと思っていても、毎年9万人がなっている。「まさか」が現実になる可能性を示して検診を促す意図は分かるが、乳がんになるのは「当たり」ではない◆予防の啓発が狙いでも、ポスターを目にする人の中には闘病中の患者もいる。福引の当たりは豪華な賞品や楽しい旅行だろうが、乳がんになれば治療と向き合わなければならない。「当たり」がもたらす状況は大きく異なり、主管する日本対がん協会は先日、ウェブサイトで患者や家族らに謝罪した◆想像もしなかった反応を受け、反省した苦い経験は何度かある。誰もが自由に情報を発信できるネット社会。思いが至らないことはあるが、できる限りの思慮、配慮は尽くしたい。(知)

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