石油元売りに補助金を出し、その分を差し引いて小売価格を抑えるガソリン急騰抑制策の発動から1週間経過したが、平均小売価格は170円超で高止まりしたままだ。180円に迫る地域もある。

 政府による市場介入は対症療法にすぎず、健全な市場メカニズムを損なう恐れもある。化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を進める脱炭素化の加速も踏まえ、高値に適応する経済社会の構築に向けた抜本的な取り組みに踏み出すべきだ。

 寒冷地での灯油の値上がりは家計に大きな負担になっている。運送業、農業、漁業も経営規模によっては厳しい状況に追い込まれている業者があるだろう。こういうところには局所的に公費でのてこ入れは必要だろう。

 しかし、これを一律に全面展開することは公益にかなうのか。補助金は財政出動によって賄う。国民負担が生じるがその効果はどうだろう。全否定するつもりはないが、店頭価格は仕入れ値のほか、競争環境などを踏まえて事業者が決めるため補助金が出たからといって機械的に抑制されるものではない。

 仮に政府の思惑通りの価格帯に抑制できたとしても、市場の役割がゆがめられかねないため、もろ手を挙げて歓迎はできない。市場価格は需給を反映し合理的理由があってそこに定まっている。

 この価格は消費者、生産者の行動に影響を与える。例えば、生産者は価格次第では増産のための投資を決断する。だが「官製価格」では本当の市場動向を判断できない。資本主義下の経済活動にはそぐわないと指摘しておきたい。

 今回のガソリン価格急騰は、世界的に脱炭素化が加速する中で、化石燃料にどう向き合えばいいのかという問いを突き付けた。一足飛びに全面的な再生エネに移行できるわけではないので、化石燃料への依存は低減しながらも一定程度は残り続ける。これをどう確保しながら脱炭素につなげていくかという難問に取り組まなければならない。

 「足りないから増産」「高いから補助」という短絡的な対応は脱炭素化のための取り組みに逆行する。再生エネの開発・普及状況を見ながら原油などの生産・消費量を調整しなければならない。

 地球温暖化の深刻化で投資資金は原油開発に背を向けつつあるが急速な資金引き揚げは危険だ。現在の需要を賄うだけの生産能力を維持できるレベルなのか点検する必要はある。

 だが基本的には原油需要は低減していく。今回はこれに新型コロナウイルスやウクライナ情勢の不透明感が加わって、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの産油国でつくる「OPECプラス」は追加増産を拒否し、米原油先物は約7年4カ月ぶりの高値、1バレル=89ドル台をつけ90ドルに迫った。抑制策は3月に終了するが高値が続く可能性は高い。追加の政策が必要になるかもしれないが同時に社会全体が高値に慣れていく方策も検討したい。

 使用量を減らすための電気自動車(EV)や省エネ住宅の普及の加速も課題だ。想定油価を高めに見積もった経営計画を作るなど企業にも工夫が求められる。こうした取り組みの支援や、価格の半分近くを占めるガソリンの税金のゼロベースからの見直しが政府の課題になるのではないか。(共同通信・高山一郎)