法務省は通常国会で、受刑者に対して一律に木工や印刷など刑務作業を義務付ける懲役刑と、作業義務のない禁錮刑を一本化し、新たな刑罰として「拘禁刑」を創設する刑法などの改正案提出を目指す。高齢者から若年者まで、それぞれの特性に応じ作業や教育・指導を柔軟に組み合わせた処遇により、再犯防止や更生を促す狙いがある。

 例えば、受刑者が高齢なら、刑法で1日8時間以内と定めてある作業の時間を減らしたり、なくしたりして、代わりに年金や生活保護といった福祉関連の講義、健康管理の指導などを行う。若年なら、再犯防止プログラムによる改善指導や学力を身に付けさせる学科指導などに時間を割く。

 2020年の刑法犯検挙者18万2582人のうち再犯者は8万9667人で、再犯者率は過去最悪の49・1%だった。そうした中で再犯防止や更生の実を挙げるには法整備に加え、出所後の住まい確保や就労などを巡り継続的な支援の拡充を図っていく必要がある。

 新たな刑罰の名称案は複数あるが、刑法の「懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」「禁錮は、刑事施設に拘置する」という二つの規定を一つにして「刑事施設に拘置して改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、または必要な指導を行う」といった内容にする見通し。1907(明治40)年制定以来の刑罰見直しとなる。

 きっかけとなったのは、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げるかどうかの議論だった。18歳、19歳が少年院送致など保護処分の対象から外れ、成人と同様に刑事裁判で裁かれるようになると、家庭裁判所や少年院などの教育的な処遇を受けられなくなり、立ち直りが難しくなることが懸念された。

 法務省の勉強会は16年12月の報告書で年齢を引き下げた場合の制度案として、懲役と禁錮の一本化を提示。法制審議会でも年齢引き下げとともに議論され、最終的に若年者に限らず、全受刑者の更生につなげる新たな刑罰として20年10月、法相に要綱が答申された。

 これまでにも受刑者の更生に向けた教育・指導は行われていたものの、刑法で懲役に義務付けられている刑務作業を優先せざるを得ず、思うように時間を確保できなかった。さらに禁錮は入所者全体の0・3%にも満たず、刑罰として維持する必要性が薄れていた。

 とはいえ、法整備がどこまで再犯防止につながるかは不透明だ。21年版再犯防止推進白書によると、出所後、2年以内に再び罪を犯し入所した「再入率」は15・7%。21年までに16%以下にするという政府の目標は達成された。だが満期釈放者の再入率が23・3%で仮釈放者の倍以上となり、対策を迫られている。

 また11年の出所者について調べたところ、満期釈放者の10年以内再入率は55・4%で、そのうち、だいたい9割が5年以内に再入所していた。

 保護観察の対象となり保護観察官や保護司の指導を受ける仮釈放者と異なり、刑期を終えた満期釈放者は出所後をフォローしにくい面がある。

 20年に満期釈放者の87・1%は仮釈放の申し出をしていなかったが、出所後の行き先がないという理由が62・5%と最も多い。就労や福祉も含め出所後の社会復帰をどう支えていくか、模索を続けなければならない。(共同通信・堤秀司)

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