日本の自動車メーカーが電気自動車(EV)への巨額投資に乗り出す。トヨタ自動車は4兆円、日産自動車も2兆円を投じ、先行する米国、欧州、中国のメーカーに対抗する。異業種も強い関心を示しており、国内ではソニーグループが市場参入を検討し始めた。

 だが、EVの開発や普及はメーカーの力だけではできない。日本メーカーがEVシフトへ走りだす2022年は、自動車社会の未来図を描く1年にしなければならない。

 トヨタ自動車は30年を目標に、EVの販売台数を350万台に拡大する。トヨタの世界販売台数の35%をEVにすることを計画している。

 日産は10年12月、量産型の「リーフ」をいち早く発売した。その後、米テスラや欧州企業に追い抜かれてきたが、再びEVを経営戦略の中心に据えた。

 海外勢では新興の米テスラが100万台近くを量産し、先頭を走る。米アップルなどIT企業の参入もうわさされている。EVに及び腰とされてきた日本メーカーの姿勢もはっきり変化してきている。

 ハイブリッド車(HV)、燃料電池車も選択肢として残るが、世界の潮流を考えればEVに軸足を置くことは避けられそうにない。長距離走行の壁を破り市場で主導権を握るため、新型電池の開発にメーカー各社はしのぎを削っている。トヨタは4兆円の投資額のうち、半分は電池の開発につぎ込む。日産は走行距離を延ばす鍵になる「全固体電池」を搭載した新型車を28年度までに実用化するという。

 だが、技術開発の競争だけではEVの時代は見えてこない。市街地や高速道路の充電拠点が広がらなければ、安心して遠出はできない。自動車各社の販売店、ガソリンスタンド、商業施設などを利用することが想定されているが、エネルギー業界、政府、自治体などとの協調が欠かせない。

 電力需要も変化するだろう。国内で大量のEVが走るようになるなら、電力各社の発電能力の増強が必要になる。二酸化炭素を排出するガソリン車は減っても、化石燃料に依存した発電が増えるという見方もある。EV市場の拡大と電力需要に関する信頼できる予測と、それを前提にした電源構成の議論を求めたい。

 EVが自動車産業に与える影響は大きい。ガソリンなどを燃焼させるエンジンに比べると、EVのモーターは構造は単純で、部品点数も大きく減る。エンジンの部品や素材を生産してきたメーカーは、培ってきた技術を転換する必要に迫られるのではないか。

 国内の自動車メーカーは、EVへの転換によって部品メーカーの経営が悪化し、技術力を失うのを避けようとしている。日本勢は完成車メーカーを中心に部品や素材の会社が一体で開発に取り組むのが強みだった。しかし、いまはそれが海外のライバルほど素早く動けない要因になっている。

 技術転換が起きれば、雇用にも変化が生じる。自動車関連の就業者数は約550万人に上る。雇用を維持しながら、事業や技術を転換するのは簡単なことではない。

 脱炭素の流れを後押しするため、公的資金を使った大規模なEV支援も考える余地がある。充電拠点の整備、雇用維持など社会的に必要な対策を、官民で多面的に検討しておくべきだろう。

(共同通信・永井利治)

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