今年は寅(とら)年。昨年は丑(うし)年だった。牛は歩く速度が遅い。大正天皇に「牛」と題した御製(ぎょせい)がある。〈人はみな牛のあゆみにならはなむつまづくことのたえてなければ〉。「慌てず、一歩一歩確実に進もう」という意味だろう。また、牛を三つ書いて「犇(ひし)めく」と読む。コロナ下で人が密集する光景が少なくなり、ほとんど使わなくなった。懐かしい響きが復活してほしいと思う◆一方、虎は「一日千里を走る」といわれるように、速くて強く、気高く、孤高のイメージがある。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は目標に向かう時、安全な道ばかり選んでは達成できないという教え。蛮勇はよくないが、逆境の時ほど勇気が必要と感じる◆「虎に翼」はもともと勢いがある者に、さらに威力が加わることをいう。「騎虎(きこ)の勢い」は、勢いに乗れば、もはや後戻りできない状況を指す。いずれにしても虎にあやかり、勇猛果敢に進む一年にしたいと思う◆とはいえ、新型コロナウイルスの国内感染者が初めて確認されてから、あと1週間で2年。コロナの第6波が押し寄せる3年目も辛抱が必要になりそうだ。虎ではなく、転ばぬように手を取り合い、「牛歩」で進むしかないだろう。せめてプロ野球は、丑年にオリックスバファローズが優勝したように、寅年の今年こそ阪神タイガースが優勝してほしい。(義)

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