子宮頸(けい)がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの積極的接種勧奨が再開されました。2013年4月に小学6年生から高校1年生までの女子に公費で接種できる定期接種になりましたが、副反応の報道がなされ、わずか2カ月後に国が積極的接種勧奨を中止する方針となり、8年間も経過してしまいました。その間、各市町のホームページを見ると「積極的接種勧奨は行っておりません」と書かれていて「HPVワクチンは打てないのね」という誤解を与えてしまったこともあり、接種率は対象者の1%以下になりました。

 マスコミで激しいけいれんなどの映像を見ると、ワクチンとの因果関係は明らかでなくても「万が一、わが子に起こってしまったら…」と不安になる気持ちもわかります。確率は低くても、わが子に起こればそれがすべてです。

 ただ、副反応もなくワクチンの恩恵にあずかる大多数の人たちのことを考えると、この8年間の空白は残念と言わざるを得ません。実際に20代女性の子宮頸部異形成(子宮頸がんの前がん病変)は増加しています。妊娠して初めて子宮頸がん検診を受けたら異常が見つかった、妊娠継続を諦めて子宮全摘をしなければならなかったというケースもあります。

 思い浮かぶのはワクチンができる以前に出会った子宮頸がんの患者さんたちです。治療しても再発転移し、妊娠出産することを諦め、人生の夢を諦め、最後は生きることも諦めなくてはならなかった人たち、遺(のこ)された幼い子どもたち、子宮という命をはぐくむ臓器にできた“がん”で命を奪われるというやるせなさを感じます。あの悲劇がワクチンで避けられるのなら…と思うのです。

 積極的接種勧奨中止の前はインフルエンザと同じように電話で予約されるだけでしたが、最近は母娘でHPVワクチンについて説明を聞きに来られ、納得された上で接種される方が増えています。十分に考えて意志をもって接種されることは良いことだと思います。

 高校1年生までに打つことができなかった方たちの救済措置としてキャッチアップ接種も行われます。ワクチンについて、子宮頸がん検診について、しっかり考えて自分の健康を守りましょう。(伊万里市 内山産婦人科副院長、県産婦人科医会理事 内山倫子)

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