日米両政府は外務、防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)をテレビ会議方式で開き、日米同盟の抑止力の強化を確認し、新たな防衛装備品の共同研究で合意した。日本側は敵基地攻撃能力保有の検討も念頭に防衛力を抜本的に強化すると表明した。

 中国や北朝鮮の動きをにらみ、抑止力強化の名の下に、自衛隊と米軍の装備強化と共同行動を進めるものだ。しかし、対峙(たいじ)する各国が抑止力を掲げて軍備を強化すれば、不測の事態が起きる「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。地域の緊張緩和に向けた、対話の努力こそを尽くさなければならない。

 主体的に抑止力を担う在日米軍の安定的な運用には、地域の理解が不可欠だ。だが、在日米軍基地から「染み出した」(玉城デニー沖縄県知事)とみられる新型コロナウイルス感染が基地のある沖縄、山口両県周辺などで急速に拡大し、基地への信頼が揺らいでいる。

 林芳正外相は2プラス2で、米兵の外出制限を含めた感染対策の徹底を求めたが、実効性が担保されるのかどうかが問題だ。基地のある自治体や住民との信頼構築に真摯(しんし)に取り組むよう求めたい。

 2プラス2では、中国や北朝鮮が開発を進める最新鋭の極超音速ミサイルなどに対抗する装備品の共同研究を行う協定に署名した。また、発表文書は、中国が軍事的圧力を強める台湾情勢に関して「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記。「緊急事態に関する共同計画作業について確固とした進展を歓迎した」と言及した。

 「共同計画」の具体的内容は明らかにされていない。ただ、自衛隊と米軍が台湾有事を想定し、鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置く共同作戦計画の原案を策定したことが先に明らかになっている。住民を戦闘に巻き込む可能性の高い計画であり、再考すべきだ。

 岸田文雄首相は2プラス2前日に、オーストラリアのモリソン首相とのテレビ会談で、自衛隊と豪軍部隊の共同訓練を円滑に行うための協定に署名した。「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために協力し、米国とインドを含めた4カ国の枠組み「クアッド」の連携を強化するものだ。だが、軍事的な連携強化に傾斜するばかりでいいのか。危機を招かない外交を展開するよう求めたい。

 米軍基地での新型コロナ対策について、ブリンケン国務長官は「日本側の要望は理解している。懸念を払拭(ふっしょく)するよう努力したい」と強調、オースティン国防長官も「地域住民と米軍兵士の安全のためにできる限りのことをしたい」と述べた。

 しかし、こうした事態を招く背景に、在日米軍を日本の国内法の適用外とする規定を含む日米地位協定とそれに基づく日米合同委員会での合意があるのは明白だろう。

 ところが、岸田首相は「現時点で感染ルートを断定するのは難しい」と発言、地位協定の見直しも否定している。日本政府がこうした弱腰で住民を守れるのか。

 発表文書は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画についても「唯一の解決策」と明記した。過重な基地負担にさらされる地元住民の気持ちをくみ取るのが「国民の声を聴く丁寧な政治」ではないのかと問いたい。(共同通信・川上高志)

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