政府は、新型コロナウイルス感染が急拡大している沖縄、山口、広島3県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針だ。

 昨年11月から政府は主要国中で最も厳しい水際対策を講じてきた。しかし県内に駐留する米軍が「穴」となり、基地経由で新変異株「オミクロン株」が市中へ広がったとみられる。「特権」の壁に守られたずさんな検疫態勢が日本国民の命と健康に危機をもたらした。米軍の責任は明らかだ。

 昨年12月、沖縄県の米海兵隊キャンプ・ハンセンでクラスター(感染者集団)が発生。その際、米兵らが米国出国時にPCR検査をせず、日本入国直後の行動制限期間中も基地内を自由に動き回れたことが分かった。批判の声を受け、米軍が出入国前後の検査を始めたところ、同基地では検体の47%が新変異株「オミクロン株」と判明した。

 この間、県は米軍や日米両政府に対策徹底を要求。だが米軍関係者がマスクをせず基地外で飲食する姿が目撃され、飲酒運転容疑での摘発も相次いだ。県民感情を逆なでする論外の行動だ。

 背景には、在日米軍を日本の国内法の適用外とする規定を含む日米地位協定の存在がある。この協定に従えば、米国本土と同レベルの緩やかな感染防止策を取れば済む。

 しかしそれがいかに合法的であろうと、ウイルスには基地と市中を区切る塀は関係ない。政府は入国した米兵らに日本同様の行動制限を要請していたが、それも守られなかった。米兵が日本国内で活動する以上、日本のルールに合わせなければ感染防止策が徹底できないのは当然ではないか。

 林芳正外相はブリンケン米国務長官に、米兵らの外出制限を含む対策強化を要請した。究極的には地位協定改定が必要だろうが、政府には確実に実行させる責務がある。

 同様の問題は沖縄に限らない。山口県にあり広島県に近い米軍岩国基地でも感染者が多く出て市中へ拡大している。神奈川県の横須賀基地、青森県の三沢基地などでも感染が相次ぐ。米軍には十分な情報提供と疫学調査への協力を強く求めたい。

 年明けからは都市部中心に全国で感染者が急増、既に「第6波」に入ったと見るべきだ。岸田文雄首相は、感染急拡大地域では陽性者全員を入院、濃厚接触者全てを宿泊施設待機とする措置を見直し、自治体判断で症状に応じ自宅療養などに切り替える対応を発表した。

 一昨年春の第1波から昨夏の第5波まで、流行の波は倍々で大きくなってきた。2、3日で感染者数が2倍になるとされるオミクロン株の強い感染力を考えれば、首相が強調するまでもなく「先手、先手の対応」で予防、検査、早期治療の態勢を整えるのは当然だ。

 米軍基地の失態を見ると水際対策もなお重要だが、今後は市中感染が各地で急拡大し、自宅や宿泊施設を活用しても間に合わずに医療機関が逼迫(ひっぱく)する最悪の事態へ対応できる準備を急ぐべきだ。

 海外でオミクロン株が拡大した昨年11月末、首相は全世界を対象に外国人の新規入国を禁止するなど早めに対応した。10月以降は緊急事態宣言、まん延防止措置が必要ない小康を保ってきた経過は一定の評価に値する。

 だが正念場はここからだ。約3万7千確保した病床、ワクチン3回目接種、無料検査拡大、新たな飲み薬などを総動員し第6波を乗り切りたい。(共同通信・古口健二)

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