新たな年の幕開けを告げる特別展「一瞬間の“煌(きら)めき”~令和の心を女性に描く」が元日から、佐賀市の県立美術館で開かれている。唐津市厳木町出身の「風の画家」中島潔さん(78)=静岡県熱海市=が、画業50周年の集大成として新たな女性画シリーズを発表した。

 中島さんの画業を振り返ると、真っ先に挙がるのは、郷愁あふれる童画シリーズだろう。そして、もう一つの柱が女性画シリーズである。大正ロマンの画家竹久夢二をほうふつとさせる「はかなさ」が特徴だが、その女性画が大きく生まれ変わろうとしている。

 特別展では第2部で、これまでのはかない表情の女性画を鑑賞した上で、第3部の「令和の心を女性に描く」へ入る。

 新たなテーマは「女性のしなやかな強さ」。描いたのは、ねぶた師や鷹匠(たかじょう)、杜氏(とうじ)、やぶさめなど伝統文化を支える女性たちの姿だ。新シリーズ10点はいずれも、50号、または120号と大作ばかり。その大きさに加え、大胆な構図と華やかな色合いに目を奪われる。

 だが、芸術の世界には「神は細部に宿る」という言い回しがある。今回の展示はガラスケースに収めないむき出しの状態で、画家の筆致までつぶさに観察できる。たとえ、黒一色に塗りつぶしているように見えたとしても、近づいてみると、細かな文様がびっしりと描き込まれているのが見て取れる。

 さらに注意深く見ると、女性たちが身につけた衣装に、画家のメッセージが込められているのに気づく。鳳凰(ほうおう)の羽根や、龍のうろこをイメージした文様が、どこかにひそませてある。それは「崇高な精神」の表現だろう。

 もう一つの見どころは、これまではあまり描かれなかった、リアルな動物たちだ。ずっしりとした重量感の熊をはじめ、大きく羽ばたこうとするタカ、疾走する黒々とした馬。いずれも、主役である令和の女性たちの世界をしっかりと下支えしている。

 これまでの中島さんの半世紀に及ぶ画業を振り返ると、常に時代の風を捉えてきたと言えるだろう。米同時多発テロが起きた2001年には、金子みすゞの詩から着想を得てイワシの群れで命の循環を表現した「大漁」で人々の浮足だった心を癒やした。2011年の東日本大震災では異色とも言える「地獄絵」を通じて、どんな世界にも救いがあるのだと示してみせた。

 本展では伝統文化を支える女性たち10人が描かれたが、女性の刀鍛冶だけは完全なフィクション。「日本刀は精神的な象徴でもある。もしも、命を生み出す女性が刀を生み出すならば、そこに新たな意味合いが加わるのではないか」と願いを込めたという。

 今、世界はコロナ禍のパンデミック(世界的大流行)に見舞われ、かつてない閉塞(へいそく)感に覆われている。国際的には対立が先鋭化し、足元では格差が広がり、人命を軽んじた犯罪も相次ぐ。

 女性たちの「しなやかな強さ」に期待を込めた中島さんの新シリーズは、立ちこめた暗雲を打ち払おうと呼び掛けているようだ。足元をしっかり見つめて、それぞれの一歩を踏み出そうと私たちを後押ししてくれる。(古賀史生)

このエントリーをはてなブックマークに追加