新年のあいさつを交わしていると、多くの人が新型コロナ収束への期待を口にした。昨日は佐賀県内でオミクロン株の疑いを含む15人の新規感染を確認。第6波の兆しなのか。不安が払拭(ふっしょく)されない中、誰もが願っているのは安心して過ごせる「普通の日常」だろう◆そんなことを感じながら、宮本輝さんの小説『草原の椅子』を読み返していると、主人公が「安心して生きる」ということについて親友に語る場面があった◆〈安心しているということは、能天気に油断しているというのとはまったく違う。物事にかしこく対処し、注意をはらい、生きることに努力しながら、しかも根底では安心している…。そういう人間であろうと絶えず己に言い聞かせることだ〉◆安全と安心は切り離せないが、安全は科学やシステムなどの問題なのに対し、安心は心の問題である。不安におびえて生きるのも、安心して生きるのも気持ちのありようにかかっている。そのために、しなやかで強い心を持つ修養が必要なのかもしれない◆なにげない日常にも、強気と弱気が入り交じってくる。少しでも弱気を阻み、安心して過ごしたい。今年もいろんなことがあるだろうが、右往左往せず、冷静に対処しようと、自らに安心するための修養を課してみる。その積み重ねが穏やかな普通の日常につながると信じて。(知)

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