2022年に発売開始から50周年を迎える江崎グリコのプッチンプリン。変わらぬおいしさと仕掛けで、たくさんの笑顔を生み続けている

 カップの底の爪をプチッと折ると、カラメルの帽子をかぶった、カスタード色のぷるぷるとした液体とも固体とも言いがたいものが皿にストンと落ちる―。幼少期、この仕掛けに心躍らせた人は多いのではないだろうか。1972年の販売開始から今年で50周年を迎える江崎グリコの「プッチンプリン」。国民的スイーツとして不動の人気を誇るが、実は生誕当初から佐賀県内の工場で作られ続けている。

 江崎グリコの製造子会社、グリコマニュファクチャリングジャパン(GMJ)。その佐賀工場は佐賀市大和町にあり、乳製品の製造を手掛けている。12月上旬、工場を訪ねると、干貝博彦工場長(56)が「プッチンプリンを手掛けているのは、佐賀と東京の2工場だけ」と誇らしげに教えてくれた。プリンに用いる牛乳も佐賀県産が多く使われているという。

江崎グリコの製造子会社、グリコマニュファクチャリングジャパンの佐賀工場。プッチンプリンの製造を手掛けているのは、ここと東京工場の2カ所だけだ=佐賀市大和町

 プッチンプリンが生まれた70年代初頭は、プリンの人気が高まっており、他社も続々と市販品を投入していた。後発組として差別化をどう図るか。経営層を説得するために頭を悩ませていた当時の開発担当者が、通りかかったパーラーで見かけたのが、菓子職人が容器の底に穴を開けてゼリーを取り出している風景だった。

 プリンは本来カラメルソースが上にかかっているが、市販品は容器の底にカラメルがあり、消費者は皿に移すのが面倒でそのまま食べていることが市場調査で分かった。「店で食べる形を簡単に再現できれば売れる」。底に穴を開ける仕組みを備えた容器を手掛けてくれる業者探しは難航したが、72年7月「グリコプリン」として販売にこぎ着けた。

 飽きの来ない味へのこだわりも、半世紀というロングセラーを支える重要な柱だ。卵、牛乳、砂糖という基本の材料だけでなく、「練乳やバターなど複数の乳を使い、鼻に抜けるようなカスタードの風味と、ぷるぷるとした食感のベストバランスを追求している」(マーケティング担当者)。近年では、添加物を減らす取り組みも進めているという。

 時代の変化に合わせて、柔軟に販売方法を変えてきたのもプッチンプリンの特徴の一つ。発売当初は110グラムという内容量だったが、スーパーの普及に合わせ、家族向けに一つ当たりのサイズを抑えた3個のまとめ売りを展開。176グラム(当時)と大容量の「Bigプッチンプリン」はコンビニの台頭で若い男性を中心に受け入れられた。2013年にはシリーズ累計で51億個に達し、「世界一売れているプリン」としてギネスの世界記録に認定された。

 20年3月からは食物アレルギーに配慮し、豆乳やアーモンドペーストを使用しコクのある味わいに仕上げた「植物生まれのプッチンプリン」も販売。21年7月と12月には全国に先駆けて佐賀県内の一部学校給食で導入され、みんなで一緒のものを食べる楽しさも届けている。

工場内には佐賀市出身で創業者の江崎利一氏の銅像が置かれている。右は干貝博彦工場長=佐賀市大和町のグリコマニュファクチャリングジャパン佐賀工場

 今年はくしくも江崎グリコの創業100周年とも重なっている。干貝工場長は「佐賀は創業者である江崎利一のゆかりの地。従業員たちも全国のお客さまに良質で満足していただける商品を作ることにやりがいを感じている」。世界一のプリンを携え、創業のDNAを引継ぎながら佐賀の地からの発展を誓っている。(大橋諒)

 
このエントリーをはてなブックマークに追加