「デジタル田園都市国家構想」は岸田文雄首相の目玉政策だ。昨年末、地方のデジタル人材を2026年度までに230万人確保するなどの目標を示し、総額5兆7千億円を投入すると表明した。この構想が新しい「地方創生」策と言える。

 デジタルを打ち出した背景には、新型コロナウイルス感染症の大流行がある。東京23区を中心に多くの人がテレワークを経験し、「転職なき移住」への関心も高まる。社員が出社しなくてもインターネットを使って仕事ができ、東京に本社を置く必要はないと考える企業も増えてきた。

 総務省が発表した昨年11月の人口移動報告でも、東京都から7カ月連続で人口が流出。まだ周辺県への転居が多いが、東京一極集中の是正につなげる最大のチャンスである。この流れを逃がすべきではない。

 移住の促進では和歌山県白浜町が先進例だ。温泉で知られる町は、企業が売却して空き家となった保養所の有効活用のため、コロナ前からIT企業を誘致。県と協力し、リモートワークをしながら観光を楽しむ「ワーケーション」も進める。

 政府は既に、自治体によるサテライトオフィス整備や進出企業への支援金に充てる「地方創生テレワーク交付金」を創設した。白浜町の成功体験を他の自治体に広める政策だ。

 デジタル構想では、スマートシティーを推進する福島県会津若松市が先行例だ。住民が「会津若松+(プラス)」と名付けた地域情報ポータルサイトにアクセスし、個人情報の提供に同意すれば、自分に役立つ行政や地元のサービスを受けやすくなる仕組みを目指す。

 現在は電子化した母子健康手帳や学校だより、除雪車の稼働状況などが見られる。将来は周辺自治体も含めた会津地域全体で、防災、観光、農業、地域の足の確保などにデジタルを生かし取り組む方針だという。

 この広域連携には、国土政策面からも注目したい。国土交通省の審議会は、人口10万人前後の「地域生活圏」を次の国土形成計画に位置付けて維持、強化することを検討する。生活圏とは市町村の枠を超え通勤や通学、通院など日常生活で強く結び付いた圏域だ。国は、その中心となる都市を充実させ、人口流出の防波堤、移住者の受け皿にする方針という。

 これまでは中心都市の人口が30万人以上でないと、百貨店や総合病院など都市的サービスを供給できないと考えてきた。それがオンラインによる診療や教育、ネット通販、テレワークの普及により都市がリアルに提供すべき機能は縮小。人口が少なくても圏域は維持できると判断した。

 人口減少は今後も続くだけに、現実的な判断だ。デジタルの充実によって生活圏を守る政策はより重要になる。

 デジタルをうまく使えば人口の偏り是正、地域の強化に役立つ。それを確実にするには、白浜町のように、国に先立って新たな取り組みを進められるような自由度の高い支援が不可欠である。

 デジタル化では25年度末に、自治体が持つ情報システムを標準化する目標を政府は掲げる。情報のやりとり、連携がスムーズになることを期待したい。同時に、国が自治体の情報を活用できれば、正確な情報に基づいた迅速な政策の立案、実施につながるはずだ。(共同通信・諏訪雄三)

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