人力車を引き、笑顔を見せる藤田卓さん(左)。「小城のいい場所をこれでつなぎたい」と夢を語る=小城市小城町

とろける食感が人気のわらび餅をつくる藤田卓さん=小城市小城町の「あしかり豆美人」

とろける食感が人気のわらび餅をつくる藤田卓さん=小城市小城町の「あしかり豆美人」

 歴史と伝統に彩られた“小京都・小城”のイメージアップを図るため、まちなかに人力車を走らせ人を呼び込みたいと奮闘している人がいる。大豆加工専門店「あしかり豆美人」(小城市小城町)を切り盛りする店主の藤田卓さん(48)だ。コロナ後のインバウンド需要も見据え、家族らと計画を練っている。(志波知佳)

 

 「小城には風光明媚(めいび)ないい場所がいくつも点在している。そこを、京都の嵐山のように人力車で紹介できたら…」。生まれも育ちも小城で、ふるさとを見つめてきた藤田さんはアイデアの原点についてこう語る。

 人力車は2021年5月、古民家再生で小城町に移転オープンしてきた際に初めてお披露目した。いまはイベントや結婚式で活用してもらっている。「利用してくださった方からは、最高にいい写真が撮れた、みんなが笑顔になれたと喜んでもらっている」。口コミで評判を呼び、声をかけられることも少しずつ増えてきているという。

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 移転前は同市三日月町に店があり、母親のタカ子さん(74)が考案した豆乳で練った乾麺の販売を中心に卸業を営んでいた。県産大豆フクユタカを使い、食品添加物を一切使わないこだわりの商品だが、時代の流れとともに経営は難しくなった。新型コロナウイルスが猛威を振るい、取引先が減少。売り上げはコロナ前の半分に落ち込み、店を畳むことも頭をよぎった。

 転機となったのは、東京の自衛隊体育学校で「近代五種」の五輪候補選手として日々練習に没頭している長男竜大さん(21)の一言だった。「夢をかなえた後、店を継ぎます。10年待って」。高校卒業を控えた息子の突然の宣言に「しっかりとした土台をつくっておきたい」と妻の智子さん(44)と話し合いを始めた。

 「今より販売先を広げ、一般のお客さん向けの店を出そう」。小城市の空き家バンク制度を利用し、築144年になる古民家を見つけた。「たたずまいに一目ぼれ。小城には天山山系の名水もある。ここだと思った」。クラウドファンディングで資金の一部を調達、費用がかからないよう空いた時間は大工の手伝いをした。「コロナ禍に借金までして、やめときなさいという人も多かった。でもやるしかなかったんで」

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 ペタン、ペタン―。店を訪ねると、軽快なリズムでわらび粉を力強く練り上げる藤田さんの姿があった。作っているのは新商品「笑美(わらび)もち」。やわらかい出来たてのわらびもちをほおばるお客さんが思わず笑顔になったのを見て、そう名付けた。自家焙煎した自慢のきな粉を食べてほしいとふんだんにまぶしている。「余ったきな粉は家族で分け合って食べてほしい。笑顔の食卓につながったらいいなと思いまして」と藤田さん。いまの目標は新商品販売と人力車を軌道に乗せること。人と笑顔あふれる小城市の町並みを思い描き、走り続けている。

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