選挙の投票率低下が課題となる中、昨年11月に行われた鳥栖市議選では44年ぶりに投票率の下落に歯止めが掛かった。しかし、これまで投票率の低さが指摘されてきた若い世代で上がった半面、投票率が高かった高齢者を中心に下落が目立つ気になる結果も報告された。投票所への移動が難しい高齢者が年々増えているのが理由の一つとみられ、社会全体の高齢化が進む中、高齢者が投票しやすい環境づくりが早急に求められる。

 鳥栖市議選は投票率53・04%で、2017年の前回から1・46ポイントアップした。市選挙管理委員会によると、年代別の投票率は10代が42・45%(前回比6・99ポイント増)、20代30・32%(2・77ポイント増)、30代39・20%(3・74ポイント増)、40代49・59%(2・77ポイント増)だった。

 市選管は10、20代の投票率アップについて18歳選挙権に伴う高校、短大への出前講座や児童・生徒対象のポスターコンクールなどの地道な啓発活動が浸透してきたためと分析。30、40代は22議席に31人が立候補した激戦を反映し、新人候補らによる票の掘り起こしが投票率を上げたとみている。

 一方、50代は57・44%(0・06ポイント減)で、60代67・78%(0・86ポイント減)、70代74・99%(2・13ポイント減)、80代以上53・00%(3・87ポイント減)といずれも下落した。年代が上がるほどに下落幅は大きくなり、80代以上は投票率自体も低い。この結果を受け、12月市議会一般質問で市議が「高齢者への対策が必要」と指摘した。

 高齢者の投票を難しくする要因の一つが移動の問題だ。免許返納も行われる中、自家用車を持たない高齢者の場合、遠方にある投票所には移動が難しく、坂道や階段も障壁となる。投票所は有権者の利便性などを考慮して決めているというが、「長年使っているから」という理由だけで、移動が難しい会場を使い続けているケースはないだろうか。

 選挙時の移動支援は、国の財政措置を活用して介護タクシーや公用車で送迎する自治体もある。移動支援は車いす利用者や障害者、けがをした人も利用でき、幅広い有権者に機会が確保できる取り組みで、広がりに期待したい。

 鳥栖市では、期日前投票の利便性向上も要望に上がった。同市では市役所1カ所で行っているが、唐津市では商業施設や離島を含め17カ所で行っている。市議からは、鳥栖市でもコミュニティーバスの起点になっている商業施設を期日前投票所に追加する案が示された。「買い物がてら投票しよう」とか「期日前投票をしたいので、コミュニティーバスを使ってみよう」といった相乗効果を狙ったアイデアで、妙案だ。期日前投票所を増やすには、経費や人員確保が課題というが、投票率の維持・向上のためには、今後は期日前投票所の有効な設置も重要だろう。

 選挙取材中、「高齢で字が書けなくなり、迷惑をかけるので投票には行けない」という高齢者がいると聞いた。県選管によると、投票所や期日前投票所には代筆が頼める補助員がいて、字が書けないと申し出て認められれば代理投票ができるという。こうした制度が利用しやすく整備され、周知されれば高齢者の投票のしやすさや安心感につながる。投票したい全ての人が権利を行使できる環境づくりを望みたい。(樋渡光憲)

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