正月はおせち料理もいいが、雑煮も楽しみ。各家庭で受け継がれた味があり、地域によっても違いがある。生家で親しんだ雑煮が嫁いだ先に伝わるなどして、家庭や地域を越えていくのも面白い◆以前、佐賀新聞に載った県内の雑煮特集を読み返すと、だしはカツオと昆布が主流だが、シイタケやいりこ、鶏肉などさまざまな食材が使われる。かつて海産物の行商が来ていた名残から干しエビという地域もある。具材はカツオ菜や白菜、かまぼこなど多彩で、雑煮に欠かせない餅も丸餅と角餅に分かれる◆『日本人が大切にしてきた大人のしきたり』(柴田謙介著、幻冬舎)によると、餅は丸が正式な形。満月に豊作を祈ったことから、それにあやかって丸い餅を作るようになった。それが角餅になったのは、せっかちな江戸っ子が切った餅を丸めずに食べるようになったためだという◆何かと「東京発」が席巻する現代だが、昔から性急な江戸っ子気質が日本全体に影響を及ぼしていたのかもしれない。地方の側も都会にあこがれを抱き、まねをしてきたところもあるだろう◆ただ、効率や利便性の高さだけが幸せの尺度ではない。地方には地方の暮らし方があり、コロナ下で見直されてもいる。餅は丸でも四角でも好きな形でいいとして、地方の自信を深め、しっかりと根を張る年にしたい。(知)

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