九州電力玄海原子力総合事務所の篠原雅道所長(左)に申し入れの文書を手渡した脇山伸太郎町長=13日、東松浦郡玄海町役場

 九州電力玄海原子力発電所(東松浦郡玄海町)で、火災や労災事故などが立て続けに発生している。立地自治体の玄海町や佐賀県、準立地自治体の唐津市がそれぞれ原因究明と再発防止について申し入れた後に鉄筋落下事故が起き、唐津市消防本部は特別査察の検討に入った。九電はトラブルが相次ぐたびに作業点検を実施するが、歯止めになっていない。「異常事態」と認識して、作業手順・態勢や組織のどこに問題があるのかを究明し、点検のあり方も検証すべきではないか。

 設置期限が2022年8~9月となる玄海原発3、4号機のテロ対策施設(特定重大事故等施設)の工事が始まる2カ月前の19年10月以降、トラブルの頻度が高くなっている。クレーンのつり荷落下、配電盤やケーブルの火災、ローラー車と作業員の接触事故など2年2カ月余りで8件に上る。うち4件は、九電が20年12月に発電所内の作業内容を幅広く総点検した後に起きている。今年11月16日の火災で原因の検証と対策を佐賀県が要請して1カ月もたたない12月11日に、90キロもある鉄筋が落下して作業員が負傷する事故が発生した。大事故には至っていないものの、首長たちは危機感を強めている。

 立地町として原発に理解を示している玄海町でも、脇山伸太郎町長や議会から批判の声が上がっている。脇山町長は住民に不安を与え、原子力への信頼を損なっているとして「大変遺憾。あまりにも数が多く、普通の状態ではない」と厳しく指摘した。隣接する唐津市の峰達郎市長は定例議会一般質問の答弁で九電の安全対策の取り組みに関し「積極的に関与していかなければならない」と踏み込んだ。九電の努力だけに任せていては、住民の安全を守ることがおぼつかないという強いメッセージと言えよう。山口祥義知事も九電に対して、関連する事業者と課題を洗い出して共有し、しっかり対応することの報告を求めている。

 原発敷地内では、火災前までテロ対策施設の工事が深夜も行われていたほか、1、2号機の廃炉作業、緊急時対策棟設置工事、使用済み核燃料貯蔵プール内の燃料の間隔を詰めて保管量を増やす「リラッキング」工事も進む。大規模な工事が同時並行で行われ、通常運転を含む4千人の作業員が携わっている。市議会では議員がテロ対策施設工事に触れ、来年夏までの期限に完成させなければ原発の稼働停止に追い込まれるだけに、突貫工事で無理が生じているのではないかと懸念を示していた。

 トラブルが相次いでいる原因は九電の検証結果を待たなければならないが、繰り返される事態に住民の不安、不信は高まっている。安全第一の基本をすべての作業員に徹底して、いま一度、緊張感を高めるとともに、計画にひずみがないか、「深掘り」して追及することが欠かせない。(辻村圭介)