唐津と言えばくんち。昨年は200年の歴史で初の中止ということで、2年ぶりの「復活」に街が沸いた。唐津に移住して1年半の私にも待ちに待った祝祭である。規模を大幅に縮小しての開催に、地元の人たちは「いつもはこんなもんじゃない、宵曳山(よいやま)を見ないと」と不完全燃焼気味だったが、私にとっては見るものすべてが刺激的。曳山が通るたびに、エンヤー、ヨイサーという声が響きわたる。その一体感、重厚感は圧巻で、感動で涙がじわっと湧き上がった。唐津人のソウルフードならぬ「ソウルイベント」。唐津では全てがくんちをベースに回っているといっても過言ではない。

 その興奮や喜びが、11月4日の1面など、紙面にもあふれ出ていた。くんちの翌日には、これまた昨年中止されたバルーンフェスタ開催の記事が載った。

 3日は地方創生活性化として都市での仕事を続けたまま住まいを移す「転職なき移住」の記事、23日には東京と地方で生活拠点を複数持つなど新しい働き方を視野に入れたJR東日本の新たな取り組みを紹介するなど「ポストコロナ、新しい働き方」の足音が、紙面からも聞こえてくる。

 唐津でのリモートワーク生活を絶賛満喫中の私の周辺にも少しずつ変化が表れている。本社オフィスが再開し、社員が徐々にオフィスワークに戻っており、私自身も東京や地方への出張が増え始めた。

 ただ、働き方に関する意識は劇的に変化している。フルタイムでオフィスに戻りたいという社員は少ない。オフィスとリモートワークを組み合わせたハイブリッドな働き方を選択しているものがほとんどだ。これからは、「毎日出社」「9時5時」限定の働き方はない、と私は考えている。

 例えば、朝6時や7時から仕事をはじめ、会議が入っていない時間にジムに行ったり、家事をしたりする。通勤にかけてきた往復時間を仕事に使って節約できる。小さな子供がいる社員は、子供が寝てからまた仕事に取り掛かることで業務に遅れをとらなくてすむ。産休でブランクを悩んでいた女性社員も、リモートワークで不安が解消された。

 経営陣として私の信念の一つは、社員が幸せでいるためには「それぞれに合った働き方が大切だ」ということ。その実現のカギはやはりコミュニケーションだろう。ちょっとした会話で得る情報の量はウェブ会議の比ではない。対面では話がどんどん広がる。内容だけではなく表情、声のトーンなどで相手を理解し、関係性も深化する。

 唐津に住んで実感するのは、都会と田舎、オンラインと対面のコミュニケーションのベストミックス、つまり、人との程よい距離感と働き方を実現するのに、これほど最適な場所はないということだ。ポストコロナに向けて多様化する生き様。そうした人々のリアルな息遣いを伝え、改めて郷土の強みを発掘し続ける新聞であってほしいと考えている。=11月分

(はやしばら・まりこ、唐津市)

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