「役所日記」寛政6年7月23日条(多久家資料 佐賀県重要文化財 多久市郷土資料館蔵)

 多久市郷土資料館には、多久家資料(佐賀県重要文化財)をはじめ多数の古文書が所蔵されています。庶民の暮らしがうかがえるものもあり、「役所日記」寛政6(1794)年7月23日条には、ある女性たちの武勇伝が記されていました。

 6月2日朝、二重(ふたえ)村(現在の西多久町二重)で、深川善太夫と女山村の久太夫が激しい口論を始めました。善太夫は興奮のあまり天秤棒を持ち出し、久太夫を殴り殺そうとします。そこへ二重喜右衛門の後家(夫を亡くした女性)が走り出てきて、善太夫にすがりついたところ、善太夫の帯がちぎれ、善太夫は足がもつれて芋釜(さつまいも等を保管するための穴)の中に落ちてしまいます。

 彼女と善太夫がもみ合っているところに百姓又兵衛の後家が駆け付け、善太夫から天秤(てんびん)棒をもぎ取りました。女性たちは協力して善太夫を取り押さえ、事件は大事に至らずに済みました。時の多久領主多久茂鄰は、彼女たちへ褒美としてそれぞれに御酒料300文を与えました。

 一歩間違えば凄惨(せいさん)な事件になるところを、女性たちの活躍によって、どこかユーモラスな、喜劇めいた展開に変えてしまった、そんなエピソードです。彼女たちへの褒美がお酒代だったというのも、当時の大らかな雰囲気が伝わってきます。

(多久市郷土資料館・志佐喜栄)

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