沖縄県の玉城デニー知事は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、防衛省が県に申請していた設計変更を不承認とした。埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤に対処するための調査が不十分などと判断した。

 政府は県の決定を不服として対抗措置を取る方針で、最終的には国と県の対立が再び法廷闘争に持ち込まれる見込みだ。

 移設計画はそもそも市街地の中心部にある普天間飛行場の危険性の除去が目的だ。だが、埋め立て海域で見つかった「マヨネーズ状」とされる軟弱地盤の改良工事のため新基地は運用開始まで少なくとも12年かかると政府も認めている。法廷闘争になればさらに時間がかかるだろう。その間、普天間飛行場の危険性は放置されることになる。

 設計変更は工事本体に関わる問題であり、政府は県の判断を重く受け止めるべきだ。岸田文雄首相は「特技は人の話を聞くことだ」と言う。首相交代を機に方針転換に踏み切り、直ちに工事を中止し、米政府、県と打開策を話し合うべきだ。

 総工費は政府の試算でも約9300億円に上る。完成後も地盤沈下が想定される工事に巨額の税金を投入し続けるのは無駄な公共事業の典型だ。費用は全国民が担う。沖縄だけの問題ではないことを改めて確認したい。

 海域の地盤に沈下の懸念があると2015年に地質調査した業者が防衛省沖縄防衛局に報告していたことが、共同通信が情報公開請求で入手した文書で明らかになった。にもかかわらず政府は3年後の18年末に埋め立て工事に踏み切った。

 軟弱地盤の改良工事が必要で公有水面埋立法に基づいて知事から設計変更の承認を得なければならないことが分かっていながら土砂投入を強行したのは、行政として極めて不誠実な行為だ。

 その翌年の19年2月には県民投票で埋め立てに反対が7割超に達したが、政府はその声も無視して工事を続行している。

 玉城知事は不承認を発表した記者会見で「完成の見通しが立たず、事実上、無意味な工事をこれ以上継続することは許されない」と強調。不承認の理由として、防衛局が軟弱地盤の最も深い部分を調査しておらず、地盤の安定性を十分に検討していないことや、絶滅危惧種のジュゴンに与える影響に関しても調査が不十分だと指摘した。

 最深部は海面から90メートルの深さまで軟弱地盤があるが、防衛局はその地点の調査を行わず、周辺地点の調査だけで70メートルまでの工事で安定性が確保できるとしている。調査を尽くしたとは言い難い。

 政府が対抗措置として検討しているのは防衛局が行政不服審査制度を使って国土交通相に不承認を取り消すよう審査請求する手続きだ。しかし行政不服審査法は行政によって不利益を受けた国民の権利を救済するのが目的だ。同じ政府内で申請し、裁決を下すという手法が許されるのか。

 県側の敗訴が続いている訴訟も、手続きの適法性に判断は終始している。県民の声にどう向き合うか。国と地方の関係はどうあるべきか。問われているのは民主主義、地方自治の在り方だ。

 来年は沖縄の本土復帰から50年になる。国と県の対立をこれ以上深めてはならない。危険性除去のため、まず普天間飛行場の運用を停止し、代替策を協議すべきだ。(共同通信・川上高志)

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