なにげない日常の暮らしに幸せがある。頭では分かっているが、普段はなかなか気づけない。神戸市の赤木雅子さん(50)の話を聞きながら、改めてその大切さを感じた◆赤木さんは、森友学園に関する決裁文書の改ざんを巡る問題で自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻。多くの人に関心を持ってほしいと全国の地方紙を回っており、その一環で佐賀新聞社を訪れた◆俊夫さんが亡くなったのは2018年3月。雅子さんはしばらくして普段使いの食器を処分したという。「食器は思い出がしみこんでいて、そうしないと生きていられなかった」。食器は15年ほど前、焼き物が好きだった俊夫さんと一緒に佐賀県を訪れ、有田で買い求めた5枚そろいの皿だった◆食卓に皿を並べ、いろんな話をしながら食事をする。当たり前だった団欒(だんらん)の場を失い、見慣れた食器に触れるのがつらかったという気持ちが何とも切ない。幸せは、ささやかなところにあるのだと気づかされる◆雅子さんは「なぜ死ななければならなかったのか。第三者による再調査をしてほしい」と訴え、国との裁判を続けている。どんな理由、経過をたどって改ざんが指示されたのか。組織よりも「公」のために尽くそうとし、幸せな日常を断つほど悔やんだ人の思いをないがしろにはできない。(知) 

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