カモの食害対策として、養殖ノリの漁場近くにLED投光器が設置された=11月20日、鹿島市沖の有明海

 秋芽ノリの摘み取りを目前に控えた11月20日、鹿島市沖の漁場近くに立てられたポールに、見慣れない機器が取り付けられた。

 スイッチを入れると、ドット模様、ライン状の光がノリ網を照らす。ノリを食べるカモを網から遠ざけるためのLED投光器で、鹿島市沖の有明海で深刻化するカモの食害対策として新たに導入された。観光振興策としてエコツアーも検討され、12月には海岸にLEDのイルミネーションを設置するイベントも計画されている。

 鹿島市が目指している「環境と産業の調和」を象徴する取り組みは、光が主役だ。

 

カモの食害が拡大

 「カモは味のいいノリをよく知っている」。県有明海漁協鹿島市支所の運営委員長を務める中島龍さん(55)は、賢いカモからノリを守るために頭を悩ませ続けてきた。鹿島市沖に飛来するヒドリガモは張り込んだ直後の柔らかい冷凍網ノリを好み、色落ちしたノリには寄り付かない。中島さんによると羽根がノリ網に絡まる被害も含め、7、8年ほど前から影響が拡大しているという。

 支所は音での威嚇や猟友会による駆除、鷹匠による誘導など、カモ対策に力を入れているが、「効果は出ているものの、なかなか解決までは至らない」と中島さん。決め手に欠ける中、鹿島市と協力してLED投光器によるカモの誘導に取り組むことにした。昨年度の実験で有効性が確認され、本年度は1月末まで、被害が大きい二つの漁場で効果を試す。

カモの食害は、1月初旬に冷凍網が張り込まれた直後が最も多い。今回の取り組みは被害が大きい二つの漁場で、1月末まで行われる

 

危機感の背景に環境悪化

 食害に対する漁師たちの危機感の背景には、ノリ生産環境の悪化がある。佐賀県産ノリは昨季まで18季連続で生産量、販売額の日本一を達成しているが、海況には地域差がある。鹿島市を含む西南部地区では色落ちをもたらす赤潮が頻発しており、生産量は東部地区と比べて大きく落ち込んでいる。二枚貝などの漁獲が減り、ノリ養殖への依存が高まる状況もある。

 昨季は新型コロナウイルスの感染拡大で販売価格が低迷した。「『今年こそ』という思いは例年以上に強い。何とか色落ちをせずに育ってほしい」と中島さん。豊かな恵みをもたらす有明海の環境と生物に感謝する一方で、「黒いノリを守りたい」という思いは食害を与えるカモにも向かざるを得ない。環境と産業が共存していくには、困難も伴う。

 

イメージの転換目指す

 鹿島市が目標とするのは、カモを傷付けることなく、効率的に食害を減らすことだ。LEDによる対策はコストが比較的抑えられ、既存の対策との組み合わせも可能。カモを追い払うのではなく、食害から守るエリアと守る時期を決めることで、効果を高めたい考えだ。

 最終的に、今回の事業は「食害」という悪いイメージからの転換を目指している。「光」で関連づけた12月のイベントもその一つで、実現を目指している三輪自動車「トゥクトゥク」を活用したエコツアーの実証実験として行う。食害を逆手に取り、「カモも食べちゃうおいしいノリ」としてクラウドファンディングにも取り組む計画だ。ノリ網を、そして海岸を鮮やかに照らすLEDライトが、「調和」に導く希望の光となるかー。

12月18日に行うイベントでは、道の駅鹿島の海岸を鮮やかなLEDイルミネーションで彩る
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