三角フラスコを手にした黒田チカの銅像=佐賀市の中央大通り

 きょう11月8日は、佐賀が生んだ日本初の女性化学者、黒田チカ(1884~1968年)の命日である。今風に言えば、リケジョ=理系女子の草分けだろう。佐賀市の中央大通りに、三角フラスコを手に研究に打ち込むチカの銅像が建つ。

 旧佐賀藩士の家に生まれ、佐賀師範学校を卒業、1年間の教職に就いた後、女子高等師範学校(現・お茶の水女子大)へ進学した。同校で助教授にもなったものの、1913(大正2)年、帝国大学が女子に門戸を開くと、恩師の勧めもあって東北帝国大(現・東北大)理科大学化学科へ入学し、本格的な研究生活に入った。

 日本初の女子大学生3人のうちの1人だ。チカの研究は、古来、高貴な染料とされてきたムラサキをはじめ、ベニバナ、シソなど植物の天然色素の解明だった。その業績は高く評価され、日本化学会はチカの研究資料を「化学遺産」に指定している。

 今、動画配信サイト「ユーチューブ」に「未来に輝く佐賀大のリケジョ」「明日を創る西九州大のリケジョ」と題した動画がある。研究に知的好奇心を発揮しながらプライベートな時間も存分に楽しむしなやかな女性像がうかがえ、佐賀でも確かにチカの後継者が育っている。

 チカはのちに「新聞は日本ではじめての女大学生を冷やかし半分に書く。町へ出ると人々の視線を浴びるという、なかなか女性の立場の認められていない時代でした」と振り返っている。

 チカたち日本初の女子大学生が誕生して、100年余り。リケジョはともかく、「女性の立場」はどう変わっただろうか。

 先日の衆院選で、新たに当選した議員465人のうち、女性は45人だけ。前回よりも2人減り、全体の9・7%と1割にも満たない有り様だった。

 世界経済フォーラムが今年3月に公表した、男女の格差を示す「ジェンダーギャップ指数2021」でも、日本がいまだに男性中心社会であることは明らかだ。全体で156カ国中、120位というありさまで、先進国で最も低い。項目別に見ても、教育分野の92位は比較的ましなほうで、経済は女性管理職の少なさから117位と低迷している。特に政治が147位で、全体の足を引っ張っている。

 佐賀に目を転じると、先日の佐賀市議選には9人が挑み、トップ当選をはじめ、過去最多の6人の女性市議が誕生した。女性の有権者からは「女性同士だと肩肘張らずに、よもやま話のようにして課題をくみ取ってもらえる」と歓迎の声も聞かれた。変化の兆しと受け止めたい。

 国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも「ジェンダー平等の実現」が掲げられている。女性であることが、ことさらに注目されない社会。それは同時に、誰もが自由で生きやすい社会に違いない。(古賀史生)

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