新型コロナウイルスの感染状況が改善し、佐賀県内の各学校で徐々に以前の生活に戻す動きが広がっている。授業で子ども同士の対話をできるようにするなど制限を緩和し、運動会や修学旅行も対策を取りながら実施している。元の学びの風景にはまだ遠いが、子どもたちの笑顔と歓声が戻ってきた。
「2分間みんなで話し合いましょう。よーい、スタート」。教諭の掛け声で、マスクをした児童たちが顔を寄せ合う。先日まで見られなかった光景だ。
伊万里市の立花小では授業で児童間の対話を解禁した。教諭らは「子ども同士で意見を交わすと理解が深まるし、授業も活気づく」と感じている。音楽室から縦笛や鍵盤ハーモニカの音色も響くようになった。
県内の月別感染者数は第5波のピークだった8月の2394人から、9月は606人、10月106人に減少、11月は7日現在で8人にとどまっている。県教育委員会は「各校には感染状況が改善しても気を緩めることなく、感染防止を徹底するよう求めている」と強調しつつ、部活動の他校との交流自粛を段階的に解除していった。
小中学校の多くが、運動会を簡略化して開催。応援は手拍子だけにしたり、走るレーンの幅を広げたりする工夫が見られた。修学旅行も10、11月に集中して実施し、春の予定を延期するなど調整に苦労してきた学校側は「このまま落ち着いた状態が続いてほしい」と願っている。
唐津市教委は、全小中学校に配布している児童生徒の飛まつ防止パネルに関する指導を「常時設置」から「昼食時は必ず設置」に緩めた。机の3面を囲む透明パネルは使用して1年が経ち、曇って黒板が見えづらいものもあるが、常時設置を継続する学校もある。
市街地にある児童数760人の長松小もその一つ。「パネルはクラスで陽性者が出た場合の周囲への影響を少なくする効果がある」と佐々木講吉校長。ただ、授業でのグループ活動は再開し、机を合わせて話し合えるようにした。
文部科学省は学校のコロナ対応として「感染対策を取りながら子どもの学びをできる限り保障する」との基本方針を示している。立花小(伊万里市)の宗誠校長は「現場は経験を重ね、正しく怖がることができるようになった。感染状況を注視しながら、学びを止めない工夫を続けていきたい」と話す。(青木宏文)