発足したばかりの岸田内閣への信任を問う形となった第49回衆院選は開票が進む31日深夜の時点で自民の単独過半数獲得が確実となり、「自公政権」は継続する。一方で、自民は公示前の276議席から大幅に議席を減らす見込み。新型コロナウイルスで疲弊した国民の不満は予想以上に大きく、今回の結果は“船出”する岸田政権への「消極的承認」といっていいだろう。

 「1強」といわれた安倍政権が2020年9月、安倍晋三首相の体調不良による突然の辞任で終わりを告げ、後を継いだ菅義偉首相が1年で退任。岸田文雄氏が首相就任直後に解散を決断し、衆院解散から投票まで17日間という異例の「短期決戦」だった。岸田首相は「未来選択選挙」と名付けたが、選択しようにも発足したばかりの内閣では実績がない。昨年の「合流新党」で野党第1党となり、政権交代の受け皿となった立憲民主も、政策が一致できるかを含め、その力量は未知数。4年ぶりとなった今回の総選挙は判断材料に乏しかった。ただ、有権者が国政に改めて目を向け、安倍―菅政権を「最終評価」するいい機会になったのは確かである。

 その点数は「及第点に届かず」といったところだろうか。31日深夜の時点で自民党は公示前から大幅に議席を減らす見込みとなった。さまざまな見方はあるが、やはり、「コロナ対応」への不満が大きかったといえる。国民は我慢と辛抱を重ねたが、不自由な日常をお願いする政治家の発言に説得力はなく、政治への期待が薄れても仕方なかっただろう。とはいえ、3回連続で60%を切った県内の投票率は「仕方ない」では済まされない。投票の棄権は政治への「白紙委任」ととられるからだ。

 コロナ禍で各国トップの発言を耳にする機会が増え、「政治は言葉」だと改めて気づかされた。雄弁でなくてもいい。国民が示してほしいのは「この政権についていこう」と思わせる姿勢ではなかったろうか。

 今選挙の公約を見ても「医療体制の強化」「成長と分配」「一億総中流」など響きが良い言葉が各党に並んだものの、具体性に欠けた。コロナを克服する道筋と、コロナ後の新しい時代の日本の在り方を示してほしかった。それが簡単でないことは分かるが、混迷がさらに深まる時代だからこそ、国民は強いリーダーシップを求めていると感じる。

 県内に目を向けると、2区は立憲民主の大串博志氏が勝利。今回は「野党共闘」が実現。「連敗はできない」と危機感を強めていた対立候補を草の根選挙で突き崩した。一方、1区は鳥栖市の開票トラブルで、当落判明は1日未明にもつれ込んだ。いずれにしても佐賀県は諫早湾干拓問題、佐賀空港へのオスプレイ配備、九州新幹線長崎ルートと、国策に絡む重要課題が山積。新選良には県民と国政の橋渡し役として、これまで以上の活動を期待したい。

 岸田首相は今後、新内閣を本格稼働させる。コロナ禍を抜け出す起死回生の一手は難しいが、国力は政治だけで成り立つわけではない。国民の力を合わせることが肝要であり、その意味でも岸田首相は異論にも謙虚に耳を傾け、国民と共にある政権運営を心がけてほしい。(中島義彦)