秋は深まり、朝晩は肌寒くなった。澄んだ空は眺めているだけで心地いいが、〈女心と秋の空〉と変わりやすい例えにも使われる。女心が移り気かどうかはよく知らないが、元々は女心ではなく、〈男心と秋の空〉だったという◆手元のことわざ辞典を開くと、古くは「夫」「男」と「川の瀬」「秋の空」が組み換えられて使われていたとある。〈夫の心と川の瀬は一夜に変はる〉(御伽草子)、〈男の心と秋の空は一夜に七度変る〉(狂言『墨塗』)-。女心も明治時代の辞典に収められているが、用例の数は男心が多いという◆現代では女心が一般的なようだが、詰まるところ、男も女も気持ちは移り変わるということである。何とかして、心をつなぎとめたい。いま、最もそう願っているのは衆院選を戦っている候補者たちだろう◆選挙では「風が吹く」と言われるが、有権者の気持ちは敏感に揺れ動く。前回2017年の衆院選を振り返ると、風に乗っていた希望の党が「排除」のひと言で一気に勢いを失った。支持政党のない無党派層が拡大する中で、浮動する1票をつかむのは容易ではない◆投開票は31日。熱いラブコールを見極め、男心も女心も意中の党、候補者を決めなければならない。これまでの立ち振る舞いも思い出しながら、秋空の下、移り気ではない相手を見つけたい。(知)

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