原油価格が高騰、米国の原油先物市場で約7年ぶりとなる1バレル=80ドル超の高値が続き国内では、円安の影響も加わってガソリン、灯油価格が大幅に上昇している。電気、ガス料金も値上げされる。暖房需要が高まる冬本番を迎える中、家計や企業の負担が増えそうだ。

 心配なのは、既に新型コロナウイルス禍によって圧迫を受けている低所得層や飲食・宿泊業者などへの影響だ。政府は輸送業、農漁業への支援策を周知徹底するほか、中小企業向け相談窓口の設置も検討しているが、家計負担が年間2万8千円増えるとの試算もあり、影響は広範囲に広がる恐れもある。支援拡充も視野に対応を急ぐべきだ。

 同時に相場の安定に向けて石油輸出国機構(OPEC)を中心とする産油国への増産の働き掛けを強化したい。茂木敏充外相がクウェート外相に要請しているが、さらに対象を拡大して取り組みを継続したい。日本では実感できないが、米国で原油高によるインフレ加速が懸念されている。今以上の高騰は避けたいのは米国や欧州連合(EU)も同じだ。国際協調も検討するべきだろう。

 当面の焦点は11月上旬に開催予定のOPECと非加盟産油国による会合「OPECプラス」だ。前回10月の会合では増産を見送り、これが価格上昇に追い打ちを掛けた。11月会合で増産を打ち出せば相場を冷やす効果が期待できる。

 産油国はコロナによる需要減退に対応し協調減産を継続してきたが、コロナ禍は全体的には落ち着いてきた。経済活動も徐々にではあるが、正常化を目指す動きが本格化している。今は原油需要が本格反転するかどうかの潮目だろう。一部の国で感染者の再拡大が見られることから、産油国側には増産に対し、なお慎重な見方もあるかもしれない。

 増産を避けた結果、高値が維持されれば、短期的には産油国の利益になるが、それによる世界経済の混乱が続けば、逆に需要が減退し、自らの首を絞めることにつながりかねない。

 米国やロシアが有力な産油国となって市場で存在感を増す中で、OPECにはかつてほどの力はなくなったとはいえ市場への影響力は大きい。消費国との協調、相場安定を目指し、指導力を発揮してもらいたい。

 OPECプラスが次回会合で、増産に踏み切らなければ市場は混乱の度を高める可能性もある。市場が「OPECに原油価格引き下げの意図なし」と見なせば、実需とは関係なく、さらなる上昇を見込んだ投機マネーが流入し、相場をけん引するケースも考えられる。

 石油備蓄の放出も検討せざるを得ない事態まで悪化するとは、今の状況では考えにくいが、シミュレーションはしておいた方がいい。

 ただ、時代が大きく変わったことには留意しなくてはならない。世界は2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロに向け、できるだけ化石燃料を使用しない方向にかじを切った。今回、これだけの騒ぎになるのは、まだ依存度が相当高いことを示している。

 原油高騰による経済社会への衝撃は眼前の危機で、これは緩和するべきだが、地球温暖化防止に向けた再生可能エネルギーの拡大と、産油国の原油依存経済からの脱却という大目標を見失ってはならない。(共同通信・高山一郎)

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