中国の大国化と米中の対立、北朝鮮の核・ミサイル開発など不安定要因が重なる中で、北東アジア地域の平和と安定を維持していくために日本が主体的に果たすべき役割は何か。外交・安全保障政策は衆院選の重要な争点の一つとなる。

 対話による共存と、力による対抗―。その両者を組み合わせた外交・安保戦略をどう構築するのか。明確な道筋を示す活発な論戦を求めたい。

 多くの党が日米同盟を外交・安保政策の基軸とする点では一致し、中国への警戒感も共通している。議論が分かれるのは、その中で日本の役割をどう位置付けるかだ。

 際立つのは「国防力の強化」を前面に打ち出した自民党だ。中国の軍拡や沖縄県・尖閣諸島周辺での活動などを挙げて、防衛力を抜本的に強化すると表明。対国内総生産(GDP)比でおおむね1%以内に抑えられてきた防衛費を「2%以上も念頭に増額を目指す」とした。

 北朝鮮のミサイル発射に関して、岸田文雄首相(自民党総裁)は相手国の領域内でミサイル発射基地を攻撃する「敵基地攻撃能力の保有を含めて検討する」と表明。外交・安保政策の指針となる国家安全保障戦略を改定する方針も示している。

 確かに国を守ることは政治の最大の責務だろう。ただ「毅然(きぜん)とした外交の展開」など「対抗」に軸足を置く姿勢は逆に緊張を高めることにならないか。来年は日中国交正常化から50年になる。節目を捉えた対話への取り組みが必要だ。

 自民党と連立を組む公明党は基本方針の違いが鮮明だ。「多国間主義を尊重した平和外交」を強調。日中関係も「大局的な観点から安定的な関係構築」を維持すべきだと主張する。

 北朝鮮が衆院選公示日に発射したのは、発射の兆候が察知しにくい新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられている。北朝鮮の技術の進歩に触れ、山口那津男代表は敵基地攻撃能力について「古い議論だ」と否定的な見解を示す。自公連立政権を維持するならば、この違いをどう埋めるのかを問いたい。

 中国への対処の必要性は野党も共有する。立憲民主党は尖閣周辺などでの中国の活動について「国際法違反」だと指摘。領海警備の法整備を進めるとしている。ただ、外交・安保政策では「平和主義と専守防衛」に徹すると強調。敵基地攻撃能力についても、枝野幸男代表は「現実的でない」と否定する。

 一方、立民と候補者調整を行った共産党は日米安保条約の廃棄を主張する。両党は政権交代が実現した場合でも閣外協力にとどめるとしているが、安保政策の根本での違いは見過ごせない。丁寧な説明を求めたい。

 世界の中の日本としての役割も考えたい。来年3月に予定される核兵器禁止条約の締約国会議について、立民だけでなく公明党もオブザーバー参加を主張するが、自民党は否定的だ。唯一の戦争被爆国として検討すべきではないか。

 憲法改正も重要な論点だ。岸田首相は9条への自衛隊明記などの改憲案について任期中の実現を目指す考えを示している。だが公明党は慎重な姿勢だ。立民は安全保障関連法で容認した集団的自衛権行使などの廃止を主張する。どの党の訴えが説得力を持つのかを、しっかりと吟味したい。(共同通信・川上高志)

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