過去最多となる新人6人の争いとなった佐賀市長選は、坂井英隆氏(41)が初当選を果たした。41歳での佐賀市長就任は、1999年に当選した木下敏之氏=当時(39)=に次ぐ若さ。勝因の一つはやはり、40代という「脂が乗った世代」への期待だろう。有権者は「堅実な市政」より「世代交代」を選択。柔軟な発想と行動力に県都の未来を託したといえる。

 今回の選挙は秀島敏行市長の引退表明を受け、30~70代の多様な顔ぶれが立候補した。出馬の動機は違っても、「佐賀市をよくしたい」という思いは共通。今回、各候補者の主張を吟味した有権者は多かったと思う。とはいえ、明確な争点があったわけではなく、それぞれの公約に極端な違いが見られたわけでもなかった。

 その中で坂井氏が抜け出したのは、自民の推薦を受けた組織力に加え、若さを打ち出して無党派層に食い込んだことが要因だろう。平成から令和に元号が変わって3年目。まちづくりは世代を超えて市民が結束する必要があるものの、今回の結果は若い人たちが主体となって新たな県都づくりを進めていこうという気概にも映る。

 佐賀市の良さは何か。人口は今年9月時点で約23万500人。07年の合併時は約23万8500人だったから、14年間で約8千人減少した。出生率の低下に加え、市外への人口流出も要因だ。

 ただ、個人的には適度な人口規模に思える。「100万都市」福岡と隣接し、互いに行き来しやすい。07年以降、佐賀市と福岡市の交流人口は着実に増えているはずだ。公共交通手段の充実など課題はあるものの、総じて佐賀市は住みやすい。市民が不安を強めている水害対策に力を入れ、さらに住みよい佐賀市にしたい。

 コロナ禍もあり、戦後の高度経済成長のような「バラ色の未来」を描くのは難しい。むしろ地に足をつけ、気候変動をはじめ、人類が生みだした「ひずみ」に目を向ける必要がある。「利己的」ではなく、他者にやさしい「利他の時代」に入ったと考えたい。

 坂井氏は「秀島市政」からの変化を掲げたが、何かを変えることは、決して簡単ではない。ささいなルール変更でも「抵抗勢力」が生まれる。オスプレイの佐賀空港配備や九州新幹線長崎ルート問題などの国策はなおのこと難しい。だが、賛否が分かれる課題ほど住民の声に耳を傾け、最後は首長が決断し、その理由を分かりやすく説明する必要がある。市民も全てに納得いかなくても、自分たちが選んだリーダーについていく。それが「民主主義」の形といえる。

 一方で、56・03%という投票率の低さが気になる。さまざまな理由、事情があったにせよ、投票は政治参加への第一歩。棄権は悲しい。人口減少が進む中、民間の知恵や機動力を行政に生かす「官民協働」の必要性がさらに高まっている。市民も「お任せ民主主義」ではなく、選挙を通じて浮かび上がった「佐賀市の課題」と向き合い、解決策を考えていこう。

 財源が限られる中、「選択と集中」はやむを得ないだろう。不足分野は「官民協働」で補おう。そのためには市民の声を拾い、市政につなぐ存在が必要だ。坂井市長と同時に誕生した新佐賀市議の活動にも期待したい。(中島義彦)

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