米首都ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、巨大IT企業をはじめ多国籍企業の税逃れを防ぐ法人課税の新たな枠組みで合意した。利益に見合った適正な課税は世界的な課題である格差や富の偏在の是正に欠かせない。日本をはじめ各国が、新たな枠組みを通じて公平な企業負担を実現していくべきだ。

 G20は、経済協力開発機構(OECD)がこのほど136カ国・地域の事務レベルで最終合意した枠組みについて、改めて閣僚級として支持を表明した。2022年中に多国間条約を結び、23年の発効を目指す。

 枠組みは2本柱から成る。一つは米グーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を念頭に置いた「デジタル課税」だ。

 従来の企業課税は工場など拠点があることを原則としており、インターネットを通じたITビジネスには適正な課税ができなかった。今回の枠組みはその原則の約100年ぶりの見直しになる。

 具体的には、全世界の売上高が200億ユーロ(約2兆6千億円)超で売上高利益率が10%を超える企業に対して、その10%を上回った利益の25%をサービスの利用者がいる各国で税として分け合う仕組みとした。

 GAFAを擁する米国の賛同を得るためIT企業に限らない制度となった一方で、対象は世界で100社程度にとどまる見通しという。将来的に課税の網を広げられるかどうかの課題が残った。

 デジタル課税は英国やフランスが先行し、ネット広告などを対象に実施済みだ。米国は新たな枠組みに伴いこれら独自課税の廃止を要求してきたが、先行国が受け入れることでも決着した。税制における国際協調の成果として評価できよう。

 もう一つの柱は、法人税に設ける15%の最低税率だ。複数の国で事業を展開する売上高7億5千万ユーロ(約990億円)以上の企業が対象となる。アイルランドやハンガリーなど、より低い税率で企業を誘致してきた一部の国は難色を示してきたが、枠組みへの参加を最終的に決めた。

 税負担の軽減を唱える新自由主義の影響で1980年代以降、各国が法人税の引き下げで競争してきたが、今回の合意はその転換点となる。OECDは世界で年1500億ドル(約17兆円)の税収増になると試算する。

 ただ、懸念すべき点は残った。課税対象となる収入から一定額を除ける経過措置が認められたことだ。企業を誘致したい途上国などの意向によるもので、結果的に税負担の抑制につながる。制度の抜け穴となりかねず厳格な運用を注視したい。

 日本への影響に注意を払うのは当然だ。GAFA並みにデジタル課税の対象になる日本企業は多くない見通しだが、最低税率の導入で税負担が増す企業が出てこよう。企業の海外戦略上、軽視できない。

 今年の春以降、国際社会で法人課税の見直しが急進展した背景には、新型コロナウイルスの巨額対策による各国財政の悪化と、格差拡大で巨大IT企業などへの富の偏在を政治的に見過ごせなくなった点がある。

 日本も事情は同じであり、より深刻と言える。今回の合意を弾みとして大企業や富裕層、そして株式取引で得た金融所得などへの課税の在り方を見直す時だ。(共同通信・高橋潤)

このエントリーをはてなブックマークに追加