2019年公開の映画「新聞記者」は、官邸の記者会見で当時の菅義偉官房長官とやり合った東京新聞の記者望月衣塑子(いそこ)さんの自著『新聞記者』に着想を得て製作された。大学新設に絡む不正を追う記者と、政府のやり方に疑問を抱く若手官僚。権力に立ち向かう2人の正義感と政権の闇を暴けない葛藤が交錯する◆会見取材は難しい。聞きたいことにうまく答えが返ってこない時があるからだ。とはいえ、一対一で会ってもらうには時間と労力、何より人としての信頼感を身につけておく必要がある。不祥事や不正、問題提起などのケースはなおさらだ◆「あなたに書かれたら仕方ないねといわれるくらいの取材活動や人間関係づくりが必要」とは若い頃、先輩記者に言われた言葉。「何かおかしい」と思う感覚だけはなくさないように努めてきたつもりだが、スクープを飾ったことはない◆記者活動を通じ、社会は「1+1=2」というような明快な答えばかりではないことに改めて気づかされた。コロナ禍の今は、答えが見えない課題がさらに増えているだろう◆21日まで新聞週間。今年の代表標語は「答えなき時代のヒントを探る記事」。道しるべとはいかなくても、せめて足元を照らすくらいの言葉を紡げれば、と思う。スクープは現場を回る記者に任せよう。頑張れわが社の若手記者。(義)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。

このエントリーをはてなブックマークに追加