私が非常勤として勤務している佐賀市内のクリニックおよび地域産業保健センターでは、コロナ禍で「ある変化」が生じています。その変化とは、軽症うつおよび肥満に伴う生活習慣病(高脂血症・肝機能障害・軽症糖尿病2型など)の増加傾向です。かつては、毎年、歓送迎会、忘年会、新年会、夏のビアガーデンなどが行われていましたが、今はすべて中止。加えて、会議も遠隔会議が普通となっており、対面で語り合える人が限定されています。真のコミュニケーションの機会が絶たれていることが、最大の問題だと思います。

 実際の場面で、人と人との対話が少なくなると、人のネガティブな面に目が向きがちで、「アラ探し」現象(人の欠点や悪い面に目が向いていく)が生じます。その結果、会社での雰囲気が暗くなり、マスクをしていることもあり、明るい笑顔の姿が見られません。大切なことは、人の良い面に目を向ける「タカラ探し」が人間関係を維持していく上で、最も大切なスキルであり、それは悩んでいる方との心理相談に通じるカウンセラーマインドでもあります。

 (故)緒方道彦博士(九州大学名誉教授)は次のことばを残しています。「タカラ探しの科学は、自分にどんなタカラがあるのかを探して、小さくてもそれを増やしていくスタンスですね。いくつ歳をとっても、自分に何かタカラがあるかを探しては、それをふくらましていく。だから、タカラ探しは、増える、ふくらむ科学ですね…私はタカラ探しにいそしんでいます。生物たちの、しなやかで、したたかな暮らしぶりには、いつも科学者として感服していました。タカラは増やせるものです。毎日、毎日、自分に何が使えるのか、何が駄目かを、見極めながら、過ごしています。1日終わると、毎晩往生。翌朝は毎朝誕生の心境です。人生が毎日増えていくんですね」と。

 コロナ禍で生じた人間関係の悪化を取り戻せる日を願いつつ、日々の生活を送っていますが、歓送迎会で笑ったり、泣いたりできる日を待ち望んでいる今日この頃です。(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授 佐藤 武)

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